あなたは「コードギアス」を知っているでしょうか?
ロボット+超能力+学園ものという複数要素ジャンルの悪魔合体を見事に描ききった名作アニメです。
魅力的なキャラクターはもちろん、毎週のように次回が待ちきれない鬼引きもあって放映中のファンの熱狂は僕も含めてすごかったのを憶えています。
そんな「コードギアス」も放映から10年が経過し、今年TV版の総集編が劇場版化するそうです。
さらに新作の制作も決定したということで、今日はそんな「コードギアス」にスポットライトを当てたいと考えました。
ただこの10年のアニメとの比較を単純に行っても面白くありません。
そこで作中のテーマや頻出語を再確認してみることに。
すると「コードギアス」において主人公であるルルーシュが作中でしきりに繰り返すワードに「戦略」と「戦術」があることに気づきました。
これは軍事的な意味だけではなく、ビジネスにおいてもさかんに使われる用語ですが意外と理解されていない言葉。
僕自身、最近読んだ本で何度も見た言葉ということもあり非常に興味がそそられます。
そういう理由もあって今回は「コードギアス」で「戦略」と「戦術」を学ぶというテーマで話をしようと思います。
そもそもなぜ戦略が必要なのか?
本質的には限られた資源(リソース)をいかに効果的に使うかということ
そもそもなぜ戦略が必要なのでしょうか?
効率良く目的を達成するためという意味合いもありますが、それ以上に人生において時間と肉体の限界という2つの大きな制約があるとこが大きいと私は考えています。
例えば趣味で本を読むのはどれだけ時間がかかっても構いませんが、仕事には締め切りがあります。
そしてその時間という制約のせいで、すべての要素を完璧に仕上げることは出来ないことがほとんどです。
資料1つを作るのにも、
- 論理の展開
- 使われているデータや数字の正確性や量
- デザイン
- 人を引きつける文章であるかどうか
などさまざまな要素があります。
(完璧に仕上げられないというよりは、時間があればよりよいものが出来るといった方がいいのかもしれませんね)
時間という制約があると、どの要素に時間を割くべきか?
ということを考えることでしょう。
そして何を優先するべきかはそのときどきによって異なります。
上司に提出するのに認められる最低限を満たせばよいのか、社内のコンペで周りをあっと唸らせるものにしたいのか、取引先を納得させる説得力が必要なのか。
意識しなくても上にあるように状況に応じて自分が考える最適な時間の使い方を自然としているはずです。
また、肉体的制約はよりイメージがしやすいものです。
甲子園を目指す野球部があったとして、体力がどれだけ優れていても食事もせず、トイレにもいかず、眠りもせず24時間練習することは出来ませんよね。
あるいは仕事でも内容や人によって差はありますが、長時間になるほど作業効率が落ちます。
多少の無理はきいたとしても毎日眠らずに24時間働くことなどは誰にもできません。
人間が人間である以上は肉体的制約から離れることはできないのです。
またこれ以外にも時間やお金もどれくらい使えるかは人によって異なりますが限られた資源(リソース)であることは間違いありません。
これが個人ではなく会社などの組織レベルになると「ヒト・モノ・カネ」といった風に表されるのを聞いたことがある方も多いかと思います。
個人においても組織においても資源(リソース)は常に有限です。そしてそれゆえに物事に優先順位をつける必要があり、同じ条件でより良い結果(リターン)を得るために戦略が必要なのです。
戦略は方向性、戦術は推進力
では実際に戦略と戦術とは何なのでしょうか。
端的に表すとするならば、「戦略」は「方向性」を決めるもののことで「戦術」は「推進力」を決めるもののことだと言えるでしょう。
例をあげるとするならば、「ONE PIECE」においては次の島を目指すのに方角を指し示すのにログポーズが必要です。
また、海を旅する以上は船や海列車のような移動手段の「推進力」がなければ方角がわかっていても目的地にたどり着くことはできません。
どちらもゼロでは目的を達成できないのが「戦略」と「戦術」。
「コードギアス」作中においてルルーシュが戦略を重視していることについて、どちらが重要なのかという話は後ほど説明します。
戦略と戦術という概念には複数の意味がある
広い意味 上位概念としての戦略 下位概念としての戦術
「コードギアス」作中においてルルーシュは作戦立案能力に長け、世界の三分の一を支配する強大なブリタニア帝国を少ない戦力で翻弄します。
しかし、ライバルキャラであるスザクは新型のナイトメア(ロボットのこと)であるランスロットを操り何度もルルーシュの作戦を阻むのです。
これはガンダムで言えばルルーシュは量産機のザクを率いて戦う名将、スザクは新型のガンダムでその野望を打ち砕く主人公といった従来のアニメとは逆の形。
しかし立ち位置としてはルルーシュは強大な圧制者に挑む主人公であり、スザクはその組織を中から変えようとする板挟みのポジションです。
このあたりは王道を崩しておらず、そのずれが「コードギアス」の面白いところを産んでいるとも言えるでしょう。
話がずれましたが、スザクに邪魔されたときにルルーシュは
「戦術に戦略がつぶされてたまるか!」
といったセリフに代表されるように「戦略」と「戦術」という用語を使っています。
これは相対的には戦略が上位の概念で、戦術が下位の概念であることを示すのをわかりやすく表しています。
次の項で説明するのですが、この戦略と戦術という用語の使い方は本来のものとは違うから間違っているという人も少なくありません。
ですが、別に間違っているわけではないのです。
例えば、「お金持ちになりたい」と考えている人がいるとします。
この人がお金持ちになるという目的に対し「会社を起こす」という方法を考えたとき、「何の会社を起こすか」というより細かい方法を考えるのは簡単に想像できますよね。
ここで「仕事の経験もあって詳しい洋服の会社を作ろう」と決め、その後に「じゃあどう他の会社と区別するか」という点で「他にやっている人が少ない海外向けのコスプレブランドを作ろう」という方針を決めたとします。
この場合、「会社を起こす」が戦略で「洋服の会社を作る」が戦術です。
しかし、「洋服の会社を作る」が戦略で「海外向けのコスプレブランドを作る」が戦術としても間違いではありません。
次の項で説明しますが、軍事で使われていたもとの用語は「戦略」「作戦」「戦術」という段階があります。
ただ、これは実際のビジネスなどに当てはめると3段階では不足してしまうことが多いのです(戦争でも足りないことが多くて大戦略などもう少し段階を増やすこともありますね)。
さらに「戦略」と「戦術」という用語がそこそこ普及しているのに対し、ビジネスにおいて「作戦」という用語はあまり使われないということもあります。
そういったこともあり、「戦略」を上位概念、「戦術」を下位概念といった形で固定せずに状況によって使い分けられる広い意味として使うことが多いのです。
それぞれの用語は単独で存在するものではないので、どちらかが現れたとき必ず対応するもう一方があるはず。
「戦略が~」と語られたときは「じゃあ戦術は何が対応するのか?」、
「戦術が~」と語られたときは「じゃあ戦略は何が対応するのか?」と考えるのが「戦略」と「戦術」を使いこなす第一歩になることでしょう(聞いたときに話している人が答えられなかったらカッコつけで使っているだけですね(笑))。
狭い意味 軍事用語として 戦略 作戦 戦術 兵站
広い意味での「戦略」と「戦術」をきちんと使いこなせば困ることはありませんが、一応元の意味も説明しておきましょう。
基本的にはピラミッド式の上下関係があり、先に説明した「戦略」と「戦術」の間に「作戦」が入ると思ってくれればOKです。
じゃあ「兵站」って何?
と聞かれるとこれは戦争だと弾薬の補給とか戦車の整備とか実際の戦いを支える部分のことです。
厳密には異なるのですが後方支援とかも近い言葉ですね。
コードギアスで当てはめると、
- 戦略:ブリタニアを倒すための足がかりとして日本を解放する
- 作戦:総督であるコーネリアが成田連山の日本解放戦線を攻める隙を突いて不意打ちを仕掛け撃破(もしくは捕獲)する
- 戦術:紅蓮弐式の輻射波動を使って土石流を起こし、ブリタニア軍の数を減らすとともに指揮系統に混乱を引き起こす
- 兵站:成田連山までナイトメアや武器弾薬と人員をブリタニアにバレないように移動させる(画面外で行われている)。
こんな感じになるでしょうか。
ビジネスにおける「戦略」「作戦」「戦術」は前の項であげたのと同じように解釈して問題ないと思います。
「兵站」を会社組織にあてはめるなら人事や資金調達、得た人という資源(リソース)を管理する労働時間などの就業規則や福利厚生を整えることにあたるでしょう。
作中でビジョンを持っていたのはルルーシュと皇帝の二人だけ
少し「戦略」と「戦術」の本筋から外れますが「ビジョン」という概念も重要です。
うさんくさいと思われることもあるかと思いますが、それは言ってることとやっていることにずれがあったり、心の底では違うことを考えていたりするからですね。
「ビジョン」は組織を束ねるのに掲げられた理念とか目標とかそういったものを含んだ概念です。
一番上にある戦略や、ある時期で最も強く押されている戦略のことを「ビジョン」と同じに考えることも多いです。
組織のトップのカリスマがあるかどうかは掲げている「ビジョン」が魅力的かどうかとも深く関係しています。
ちなみに作中のキャラクターに皇子や皇女など権力者が多い「コードギアス」ですが比べてみると、実は明確な「ビジョン」を持っているのは、ほとんど皇帝であるシャルルと主人公であるルルーシュだけなのには気づいていたでしょうか?
各キャラの能力・ビジョンの比較
作中での組織の長となるキャラクターを中心に能力やビジョンを表に以下にまとめました。
武力 | 知略 | 人望・カリスマ | ビジョン | |
ルルーシュ | ×(一般兵より少し上) | ◎(作中最強クラス) | ○(ゼロとしてのカリスマ・皇子としてジェレミアを従える) | (表)「正義の味方」(裏)「優しい世界を作る」 |
シャルル皇帝 | ?(戦わない) | ?(基本的に部下任せ?) | ◎(作中最強クラス) | (表)「力こそ正義」(裏)「嘘のない世界を作る」 |
シュナイゼル | ?(戦わない) | ◎(作中最強クラス) | ○(皇子として優秀で味方が多い) | なし(「人の望みを叶える」) |
コーネリア | ○(エース級) | ○(優秀) | ○(信頼の厚い親衛隊がいる) | なし(「ブリタニアの国是に従う」) |
黎星刻 | ◎(作中最強クラス) | ◎(ルルーシュ並?かなり高い) | ○(優秀な副官などを抱える) | なし(「天子様のために中華連邦を良くする」) |
スザク | ◎(作中最強クラス) | ×(普通の人レベル) | ×(普通の人レベル) | なし(「ブリタニアを中から変える」) |
皇帝の能力など個人的にどれくらい強いのかがわからなかったりしますが、だいたいカバーできたと思います。
ビジョンに関しては各キャラでそれっぽいものを括弧書きにしました。
判断が難しいのですが、はっきりと示されていてかつそれが周りに支持されているのはやはりルルーシュと皇帝だけだと思います。
組織が一定以上大きくなると戦略という具体的な方向性の他に、基本的な考え方となるビジョンがあったほうがいいです。
その戦略や戦術がズレていないか判断する根拠となったり、なぜそれをしなければならないのかがはっきりとして推進力に良い影響を与えることがあるからです。
特にコードギアスでは一国を超える広い地域の支配とそれに対抗する組織が描かれるため、トップには単なるカリスマだけではなくそれを言語化することが求められていると言っていいでしょう。
そういった観点からも、ルルーシュが黒の騎士団の勢力を急激に拡大したこととシャルル皇帝がほとんど世界征服にチェックメイトをかけるまでブリタニアを大きくしたことは無関係ではないはずです。
ちなみに表の中でルルーシュとシャルル皇帝は表と裏、二つのビジョンを持っていることを示しました。
リアルだと、どんな経営者でも少しはお金持ちになりたいとか有名になりたいとかそういった人間臭い部分があるはずです。
実際にはどちらが嘘というわけではなく、どっちも信じているというのが本当のところでしょう。
ルルーシュがキャラクターとして魅力的なのはそこが普通の人とは違い、ナナリーとの関係性というバックボーンがある上できっちり個性として描いているからなのでしょうね。
戦略や戦術よりも大事なこと
ちなみになぜいきなりビジョンの話をしたかというと、それが戦略や戦術の先にある「自分が何をしたいのか」といういちばん大切な部分と密接に関係しているからです。
ここで自分に嘘をつくと使ってしまった時間は帰ってこないので後悔することが多いのです。
全部が全部無駄になるというわけではありませんが、どうしてもこれがやりたいということがある人は大きな決断の前によく考えてみる必要があるでしょう。
ただ現実にはリスクや可能性も考慮するべきだと思います。
この場合、小さな決断であればとりあえず試してみるということも重要です。
例えば漫画家を目指したいと思ったなら、大学3年生が終わるまでは新人賞に挑戦しギリギリまで就活はしない、賞を取れたら25歳までは連載を目指すとか時期を区切って取り組むのが基本ですね。
もう他の道はない!
そう考えて背水の陣を敷いて成功すれば良いのですが、実際には表に出ないだけで駄目だった場合も数限りなくあります。
僕自身、ライトノベルの新人賞に2回応募しましたが賞を取ることはできず紆余曲折を経て就職しました。
仮にあのとき賞を取れたとしても書き続ける実力はなかっただろうと今は思っています。
ただ社会人としての経験を積んだこともありますが他に自分のことを見つめ直す機会があり、以前足りなかったものの一部が備わったのか最近作ったプロットは以前のものよりもずっと良いのです。
最近よく言われている就職か起業(フリーランス)か、という極端な2択ではなく人によって向き不向きやタイミングがあるのかもしれないというのが僕の率直なところ。
本来そこまで世界はわかりやすい単純なものではありません。
そういったときに判断をより客観的・効果的にするため、今回の戦略や戦術といった考え方、以前語った「ゼロ秒思考オプション」などが役に立つと思っています。
ルルーシュで見る戦略と戦術の具体例
それでは「コードギアス」作中で主人公ルルーシュが取った戦略・戦術で良かった点、悪かった点、評価が分かれる点について見ていきましょう。
ルルーシュが優れていた部分
メディアを使って自分たちをアピールした
他のテロリストとは違うんだぞ、という点をルルーシュは黒の騎士団が初めて世に出る河口湖の事件から積極的にアピールします。
「鉄血のオルフェンズ」2期の鉄華団などは権力者など敵の策略で悪役にされたりメディア戦略で負けることが多いのに対し、ここは間違いなく優れています。
これは味方を増やすだけでなく、ブリタニアの中で得をする人間が出ることで内部分裂を誘発する理にかなった一手です。
ブリタニア人が表立って黒の騎士団の日本独立を手伝うことはないかもしれませんが、会社が不正を行っている場合などに義憤に駆られた人がメールで情報提供をしたり駆け込み先とかにはなっていたと思います。
完全にブリタニアに敵対するだけの組織だと説得力がなかったかもしれませんが、このこともあって澤崎と中華連邦が攻めてきたときにルルーシュとスザクが一時的な協力関係を結ぶ伏線にも実はなっているんですよ。
スポンサーを見つけ、ギアスに頼らない組織運営を可能にした
ルルーシュは「目を合わせた相手に1度だけどんな命令でも下せる」というほとんど最強の異能を持っていますが、彼特有の一定のモラルを守っておりその使用には慎重です。
結局その方針は正しく、ギアスは1期終盤の悲劇を引き起こしてしまいます。
ルルーシュはわけの分からないものには相応のリスクがあるということを直感的に理解していたのだと思います。
また、黒の騎士団が大きくなるに連れてギアスに頼り切りだと説明できないお金の流れなどもリスクになると考えたのでしょう。
これを克服しようと役に立ったのが先にあげたメディア対策です。
さらにこれと相乗効果で成田で力を示したことで、京都六家という日本の影の支配者的な立ち位置のスポンサーを得ることに成功します。
「エヴァンゲリオン」でシンジ君の初戦のあとゲンドウが人類補完委員会に予算云々と嫌味を言われるシーンがありますが、あれは実はかなり戦略というか兵站を頑張っている部類ですね。
ガンダムでも「ファースト」から「鉄血のオルフェンズ」に至るまで大抵スポンサーや補給に困っていることが多いです。
何となくここまで行けば基地があるから大丈夫とかで済ませていますが、主人公がきちんと環境を作ることに努力する作品はあまりありません。
(「鋼の錬金術師」なんかは国家錬金術師の資格を取ったり実は主人公が天才であるという以上に細かい所がちゃんとしていますね)
指揮官不足を補うため、藤堂を味方につけた
黒の騎士団が大きくなるに連れ、またランスロット(スザク)の度重なる妨害を受けてルルーシュは戦力不足に気が付きます。
ランスロットをカレンの紅蓮弐式が止めたとしても他の部分できちんとした訓練を積んだ軍人にはアマチュアの黒の騎士団は平均的なレベルで負けているのです。
戦力が増えてできることが増えるとともに、ルルーシュの見れる範囲には一定の限界がある。
そこで物語以前にかつてナイトメアという兵器の有無による戦術的優位を戦略(数を揃えたり地形の利用だと思われる)で覆した藤堂を味方につけることを考え、それに成功します。
さらに藤堂を味方につけたことで彼の部下の四聖剣という優秀なパイロットも確保。
おそらくこれ以外にも「藤堂が認めたなら……」という感じでこれを期に他の組織から黒の騎士団に合流したメンバーもいたことは想像に難くありません。
ルルーシュが失敗した部分
ギアスに対する情報収集不足(C.C.が悪い割合はおそらく半分くらい)
1期の終わりでギアスが暴走し、相手がユーフェミアだったこととタイミング、その命令の内容もあってそれまで立てていた戦略がめちゃくちゃになってしまいます。
公式のゲーム「ロストカラーズ」ではこの部分を上手く鎮められたIFが語られており、これがなければ日本の独立は上手く言っていた可能性があります。
ただ、ルルーシュ自身は物語初期でかなりギアスという得体の知れない力の情報収集に力を割いていました(壁に毎日印をつける女子生徒)。
さらにマオの存在でギアスの暴走についても把握しており、暴走があるという一定の情報は得ていたのですが、とにかくタイミングが悪かった。
これは作劇上の都合が大きかったのかもしれません。
ただ、2期ですぐにこの暴走をコントロールできるコンタクトが手渡されているのが気になります。
1期と2期の間、黒の騎士団はほぼ壊滅状態で自由に動けたのはカレンとC.C.くらいしかいなかったのにきちんとコンタクトが完成しているのです。
カレンがギアスユーザーではなかったり大局的視点を持たないことから、これはほぼC.C.主導(ラクシャータの協力あり?)で作られたと思われます。
はっきり言ってしまうと、C.C.の秘密が多すぎるのが半分くらいは原因になっているのではないでしょうか。
ルルーシュの戦う理由の一つである母マリアンヌの死についてもかなり真実に近い場所に彼女はいたと思われますが、これも秘密にされていましたね。
彼女自身の都合もありますが、シュナイゼルが出てきたあたりでエリア11に対する危機評価とそれに付随して皇帝やV.V.の介入の可能性が高まっていたと思われます。
そうなると、もうちょっと情報開示してれば違う結果になっていたのではないかと考えてしまうのです。
カレンの使い方から見る不確定要素に対するリスク評価
ここは完全にルルーシュの失敗です。
カレンはエースパイロットとして、戦力としてしか期待されていませんでした。
しかし彼女は扇の前にレジスタンスをまとめていた兄、ナオトの妹であり、またブリタニア貴族シュタットフェルト家の令嬢でもある非常に特異な立ち位置にあるのです(日本人の母とブリタニア人の父を持つハーフ)。
性格的にブリタニア人であることを活かすのは難しかったとしても黒の騎士団でもっと役目を負ってもよかったのではないでしょうか?
1期はそもそもカレンが黒の騎士団の一員であるということを秘密にしていましたが、2期ではそれもバレておりこの段階でパイロットだけに専念させていたのはちょっとミスだったかなと思います。
この点に関して、作中においてルルーシュは予想不可能な自体に弱いキャラクターとして描かれています。
特にナナリーが絡んだときとスザク関連では冷静な判断を欠いていることが多々ありました。
それもまたキャラクターの魅力、というのもありますがカレンに余計な役割を負わさなかったことを逆に見ると実はルルーシュはこのことに自覚的だったのではないか?
という風にも考えられるのです。
ただでさえ、高校生としての生活、お手伝いさんがいるとはいえ目が見えない上に歩けない妹の世話、黒の騎士団をゼロから設立し運営、ブリタニア打倒に向けた戦略の立案、実際の作戦での陣頭指揮などありえないほどのタスクを抱えているのがルルーシュです。
授業中に居眠りしていたり、リヴァルに最近付き合い悪いと言われていることから分かるようにある程度はコントロールしていたとしても明らかに抱え過ぎですね。
そういった点を鑑みると、計算できない要素は極力減らすというのは正しくはなかったかもしれないけれど完全に間違いだったとは言い切れないのかもしれません。
もちろん、マオのギアス暴走を見ているので自身のギアス暴走についてはもう少しリスク評価を高めに見積もるべきだったのは確かですが……。
作劇上の都合で怠らざるを得なかったランスロット対策
これはルルーシュの頭脳ならもっと対策してしかるべきだったと思う部分です。
ランスロットに2回邪魔された時点で情報収集し、特派に破壊工作を仕掛けるくらいはするべきでした。
ただ、これをやってしまうと少し後まで引っ張ったスザクがパイロットであることが早い時期に明らかになってしまいます。
そういうこともあって、作劇上の理由で最適解が取られなかった部分であると個人的に考えている部分。
もちろん、先にあげた仕事を抱えすぎ、オーバーワークで手を出せなかったと考えることもできるのですが……。
もしかしたら情報収集を考えてはいたけれど、タイミングよく対抗手段として紅蓮弐式を得たことでリスクの評価を引き下げたというのもあるかもしれませんね。
戦いたくないならスザクがパイロットという事実を知った上で前線に出てこれないようにするというのも考えられますが、二期のナナリーとの対峙を考えると相手の意志を尊重する(ただし身内に限る)性格も影響していたのかなとも思います。
評価が分かれる部分
ギアスの使い方
2期後半で吹っ切れたように、ギアスの暴走など気にせず使いまくっていればすぐ日本解放はできたように思います。
ただ、ギアス嚮団が後ろに控えていた(確実に暗殺を成功させるロロの存在)こともありブリタニア打倒まではいけなかったのではないでしょうか。
ギアスの暴走のリスクを考えた上で使用を最小限にしたとすればこれは絶対的な正解はない難しい問題です。
正体を明かさなかったこと
これも非常に悩ましい部分ですね。
視聴者視点だとカレンには明かすべきだったと思われることが多いかと思います。
ただ、母親が殺されたり父であるシャルルに捨てられたことで人間不信の要素がルルーシュにはあります。
彼視点だと厳しい決断であることは確かなのです。
最適解があるとしたら、組織の初期中心メンバーで1期での戦線崩壊と2期での裏切りに繋がった扇に明かし、信じてもらえなければギアスで記憶を消すという選択でしょうか。
ただこれもルルーシュ視点だと京都六家の桐原には正体を明かしており、扇たちの前で保証されたからもういいだろうという理由があるといえばあるのです。
一人に明かせばいずれ明かされていない人が不満を持ったり、ゼロという存在の象徴としてのイメージが弱まり2期でのトンデモ回、日本からの脱出も説得力を失うので結局どれが正解とは言えないと思います。
身内に甘い
これはナナリーとスザクに関してですね(2期で咲世子さんにも正体を明かすので心を許していると思います)。
加えるならユーフェミアとシャーリーに関しても判断を誤ることがあったと思います。
逆にC.C.は初期から共犯者という他にない立ち位置を確立していたのに対し、カレンが2期まで身内枠に入らずヒロインとしても損をしたのは印象深いですね。
ただ、ルルーシュが身内に甘くなければそもそも「優しい世界を作る」というビジョンはなかったとも思うのです。
そうなればギアスを使って母の死の真相を追うだけでただの異能ものになっていたような気がします。
これが表で近い評価だったルルーシュとシュナイゼルの違いなのでしょう。
そしておそらく物語前半ではシュナイゼルの方が優れていても、後半では成長したことでルルーシュが勝つという作品を通して見たときの面白さでもあるのです。
まとめ
ルルーシュはほぼ一貫してブリタニア打倒に効果的な戦略を取り続けており、結果を出しています。
戦術的にスザクの邪魔で負けることは多々ありましたが、戦略目標はクリアしており戦いの後で状況は良くなっているのです。
ただ、戦術的にもカレン(と紅蓮弐式)やギアスを効果的に使っておりルルーシュ本人も「計画が大幅に前倒しされた」と語っているように、戦略だけではなく戦術もゼロでは目標を達成することはできないことは明らかです。
そしてどちらが重要かと言えば、スザクや日本解放戦線が上手くいかないのは戦術(=戦力)はあっても戦略が悪かったことからわかるように戦略の方が重要なのです。
また、ルルーシュの優れていた点に組織運営や味方を増やすことが多かったことから「兵站」の重要性もわかったかと思います。
これは最初に語ったように「本質は資源(リソース)管理」ということで重要性が説明ができると思います。
いろいろと話が脱線することも多かったかと思いますが「戦略」と「戦術」について学ぶきっかけくらいにはなったでしょうか?
「コードギアス」は何度見ても面白い作品ですし、新作の制作を待ちながら見直すには良いタイミングだと思いますよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!