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『最新研究からわかる 学習効率の高め方』ベストセラーの科学的勉強法は間違い!?ふろむだ氏の最強学習効率本【レビュー・感想・まとめ】

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世の中には効率的な勉強方法を謳う本が無数にあります。


  • ベストセラーになったメンタリストDaiGoさんの『超効率勉強法』
  • テレビで人気の東大生クイズ王の『勉強大全』
  • NYタイムズでベストセラーになった『脳が認める勉強法』



こうして見ると最近では特に「実験で科学的に効果があると認められた勉強法」が人気のようです。


そんな中、こういった科学的な勉強法の矛盾を明らかにして「本当に効率的な勉強法とはなにか?」を徹底的に追求したのが『最新研究からわかる 学習効率の高め方』。


無料公開されている1巻へのリンク

 

ふろむだ - BOOTH

(上のリンクから2巻以降を買うことができます)


ふろむだ氏のブログやAmazonで無料になった1巻を読んで続きが気になっている人も多いのではないでしょうか。

この記事ではそんな通称『学習効率本』を最後まで読んだ感想などをまとめます。

続きを買うか悩んでいる人は是非参考にしてくださいね。

 

結論:『学習効率本』は一刻も早く読んだほうが良い経験値増加アイテム

無料の1巻を読んだ段階では、すごく細かく論文を読んで説得力のある本だな、という感想を持つ人が多いと思います。


私もそんな中のひとりでした。


正直、この時点では続きを買うか迷っていたんですよね。


でも巻を追うごとに『学習効率本』は、普通の勉強の効率を上げる論文を拾い集めた本とは違うということに気づいたのです。


他の勉強効率本と『学習効率本』が大きく異なるのは、ある一つの一貫したテーマをもとに効率を追い求めている点です。


このテーマのおかげで世の中に数多く存在している単なる論文のまとめ本とは一線を画した、論文を踏まえた新しい勉強法を生み出すことに成功しています。



『学習効率本』はゲームでいうとポケモンの「しあわせタマゴ」のようなもらえる経験値を上昇させるアイテムやスキル。


なるべく早い段階で身につければ身につけるほど得をします。




そして『学習効率本』がすごいのは単なる勉強の効率を上げるという表のテーマだけではありません。



実はもう1つの裏のテーマが、非常に役に立つのです。

 

 

表のテーマ:学習効率を本当に上げるにはどうしたらよいか?

学習効率を上げられない最大の敵は自分の錯覚

著者である、ふろむだ氏の前著『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』のテーマは錯覚資産についてでした。


錯覚資産とは簡単にまとめると、実力や運よりも知名度のような評価の方が実は影響力が大きいというものです。

 


2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという学者がいます。

彼の2012年の著作『ファスト&スロー』以来、行動経済学という分野は広く知られるようになりました。

ふろむだ氏の前著もこれを受けての実用書だと言えるでしょう。

 


面白いのは『学習効率本』の中でもたびたび錯覚というキーワードが出てくるところ。

私たちが効率の悪い勉強法を変えられないのはそもそも効率が悪いということに気づかないからで、直感に騙されているというのです。



この議論は非常に重要です。

『学習効率本』の基本的な考え方・テーマにはこの「直感とは一見ずれているけど本当は効率的な学習法」という一貫したものが基礎にあるのです。


必要なのは「答え」ではなく「公式」

さて、『学習効率本』では具体的にこうしろ、という議論の余地のない万人に共通の勉強法の答えは語られません。


その「答え」が語られない理由は、人によって勉強の条件が異なるからです。



例えば1年後に大学受験で数学を使う人と2週間後の定期テストで数学を使う人では勉強の仕方は異なります。


もっと言えば教科や分野はもちろん、その人の既に持っている知識の範囲なども効率的な勉強法を変える要因になります。

『7回読み勉強法』なんかはシンプルすぎてあらゆる状況には対応できないわけですね。

 

あらゆる場面であらゆる人に対して一番有効な方法というものはありません。

 

だから『学習効率本』で学べるのは勉強法の「答え」ではなく、自分の条件を当てはめれば答えが出る「公式」なんです。

 

 

これは一見すると具体的でないように思えます。

しかし実は本文中で語られる「3つのモデル」に当てはめると、他の学習法よりもかなり細かい部分の方法や、参考書や問題集・単語帳の選び方・使い方が明らかになるのです。

 

 

非常にわかりやすい一例を上げると、英単語を覚える時、kind=「優しい・種類」というように複数の意味がある単語はどう覚えたら効率が良いのかという悩ましい問題に答えが出ます

 

場合によってはこのレベルの具体性を持った勉強法を導けるのが『学習効率本』で学べる「公式」なのです。

 

 

知識・情報の更新の重要性

『学習効率本』で何度も出てくる概念として、「勉強法の効率は相対的に決まる」、というものがあります。

 

簡単に言ってしまうと、今の自分の勉強法より効率的な方法に乗り換えたとしても、もっと効率的な方法があれば損をしているという考え方です。

 

人によって勉強に使えるお金とか時間はもちろん違うわけなんですが、ここで重要なのはそんな表面的なことじゃありません。

 

 

技術の進歩で新しいツールが出てきたり、画期的なコンテンツが出てきたときにそもそも先に述べた主観の錯覚でその効率性に気づけないということなんです。

 

 

これは場合によっては、みんながパソコンを使い始めたのに文書の作成を手書きでやるような致命的なハンデを負う可能性があるのが問題なんです。

 

 

もっと言えば条件の違う他人との比較じゃなくて、自分の取れる手段の中での比較が重要ということ。


先に述べた主観の錯覚のせいで、普通にやっているとわざわざ非効率的な方法を取ってしまうというところが問題ということですね。

 

特に『学習効率本』でも中心となっている英語の学習法については、ものすごい勢いで効率的な勉強法が変化していて影響が大きいです。



個人的に振り返ってみても学生の頃とか、効率的な勉強法には先生に勧められても取り入れなかったものがいっぱいありました。


その理由の半分は今の方法から変えるのが面倒とかの主観的な錯覚。
もう半分はその方法が本当に効率的なのか確信が持てないというのが理由だったんですよね。


『学習効率本』がすごいのはこの錯覚に触れてるのはもちろん、論文から公式を導くモデルを組み立てているから方法の確かさに対する信頼性が高いこともあったりします。

 

 

 


話を戻して、新しいツールやコンテンツが出てきて効率の良い勉強方法が更新されるのは普通にあります。

例えば英語なら15年くらい前に『英語上達完全マップ』と『瞬間英作文』が出てきました。

 

そこから15年でスマホが普及してPCやタブレットの性能が上がり、コンテンツも増大しています。

 

単語の暗記は言うまでもありませんし、発音なんかも音声認識の性能が上がってアプリで非常に安くかなりのレベルまで高速で鍛えられるようになっています。

 

 

例を上げれば英語上達完全マップを10ヶ月やってみたの人は今なら確実に15万円以上は安く同じことができます。

 

(浮いたお金を『学習効率本』の勧めている方法に当てたら必要な勉強時間も最低2割くらいは削れるんじゃないですかね?)

 

 

 

場合によっては一つのツールやコンテンツによって大きく効率が変わってしまう。

それを取り入れたほうが良いのか悪いのか、判断の基準を与えてくれるのが『学習効率本』の「公式」なんですよね。

 

 

 

英語以外に重要なものはあるのか?

英語の重要性は『学習効率本』の中で触れられているのでその部分を読んでくれれば良いです。

その上で個人的に英語並かそれ以上に大事じゃないかな?と思うものがいくつかあります。

 

それが下の3つです。

 

  • 国語
  • 数学
  • 学ぶ力そのもの

 

当たり前なんですけど、そもそも国語と数学で最低限の論理的思考能力が身についてないと本を読んで自分で学ぶってことが出来ないんですよ。

 

動画とかアプリが増えて学びやすくなったとはいえ、専門的な知識・最先端の知識になればなるほど本以前の論文で、文字ベースになります。

 

というか、文字から意味が取れるかどうかで日本語と英語以上の学習効率の差が出てしまうと個人的には思っています。

 

 

高校数学なんかは微分・積分ができるようになるとかツールとして以上に、基礎的な論理的思考能力を鍛えるための筋トレみたいな側面が相当強いです。

 

 

少なくとも一人で高校の教科書や新書を読んで学べる、内容が取れるレベルの読解力・論理的思考能力の重要性は中学生・高校生とかに勉強を教えてるとすごく感じますね。

 


この点に関しては、

  • 『学習効率本』方式で日本語の単語力=語彙を増やす
  • Code.orgやScratchといった子供向けプログラミング講座で論理的思考力を鍛える
  • 英文解釈で文を品詞・役割で分ける訓練をする

といった方法が効果的かと思います。


 

「学ぶ力そのもの」っていうのは何か学びたい、身につけたいと思ったときに実際に行動に移して目標のある程度まで達成できるかどうかとかそういう話です。

 

ほしいものがあるときに自分で情報を調べるとかそういう小さいことの積み重ねや、育ってきた環境の差もある基礎的なスキルですね。


効率が良い勉強法で自分の進歩が目に見えると続けやすくなるというのもあるので、その点でも『学習効率本』は有効です。


 

この点は自己効力感とかも関わってくると思うんですが、この方面に関しては読書猿氏の『独学大全』の第1部が手助けになってくれると思います。

 

 

個人的には『学習効率本』が気になったり自己啓発とかビジネス書を読む人は知的好奇心自体は持っていると思います。


問題はその後で、本を1,2冊読んで手に入る断片的な情報じゃなくて、もっと深く知りたいと思ったり使えるレベルを目指して行動に移すかどうか。

 

 

『独学大全』が根源的な学習の動機と継続を、『学習効率本』がいざ学びだした後に毎日の学習を迷わない方向性を与えてくれるんじゃないかなと思っています。

 

 

 

裏のテーマ:論文を読む/使う・知識を自作するスキルの指南書

『学習効率本』で重要なのは情報より体験

もしも『学習効率本』はいずれ書籍版が出たとしても形式が大きく変わるでしょう。

(文章の量・図などで表したデータの量が多すぎるため)


で、情報のエッセンスを抜き出した要約みたいな書籍版(仮)とか本の要約とか感想を読んで満足してしまったとしたら絶対に損!

 

というのも『学習効率本』は単なる情報の集積じゃないんです。

対話形式で進められる、ある一つの発見をする研究者のやり取りを当事者として見ている「体験」なんですよ。

 


VRとかもそうなんですけど、外から見たのとやってみたのじゃ受け取る感覚がまったく違うものがあって『学習効率本』はその中の一つです。

 


ビリギャルみたいな逆転のストーリーがウリの本とかともまた違っていて、試行錯誤する過程が大きな効果を生んでるんですよね。

 

 

昔の2ちゃんねるとか今ならTwitterがちょっと近いです。

有名になった後でまとめサイトやリツイートされて見るのと、そもそも議論に巻き込まれてる人の体験の差。

 

これがもうまるで別物なので、読むなら絶対にBOOTHで買える元の形式のものを読んだほうが良いです。

 

(ちょこちょこ本に加筆されて使える情報が増えているのも重要なポイントです)

 

大学受験までの勉強とその後の「研究」の橋渡し役

大卒の人は卒業論文で困った人も多いと思います。

 

というのも、大学受験と大学の大半の授業でそれまで求められてきたのって知識のインプットがほとんど。

 

せいぜいが要約プラスアルファ程度のなんちゃってアウトプットなんですよね。

 

 

そこで突然、自分で問題を提起して一定の結論を得るという未知のことをやらされるのが卒論。

 

 

そもそも多くの人は論文の読み方すら教えられてないことが多いと思います。

 

 

先にも触れたとおり、『学習効率本』は情報以上に「体験」を与えてくれる本です。

 

その体験の内容がまさに、自分で科学的な裏付けのある効率的な勉強法を求めるっていうすごく具体的なものなんですよね。

 

 

『学習効率本』で作ったモデルをもとに勉強法を作ってそれを実験すればそれだけでも論文が出来上がってもおかしくありません。

 

このあたりが本文中で触れられている実装の話ですね。

 

 

大学生は1,2年のうちに読んでおいたら勉強がすごく楽しくなるし、論文を読むのも書くのもやり方が分かるので非常におすすめです。

 

 

科学的な裏付けのあるプロダクトづくりの教科書

『学習効率本』が役に立つのは学生だけじゃありません。

むしろ起業家とか何か自分でサービスを作りたいプログラマとかに向いています。

 

 

英単語アプリを作るとしたら、どういうシステムならもっと短時間で確実に効率よく覚えられるんだろう?

 

学習系のアプリはもう『学習効率本』のモデルをそのまま使えるくらいです。

 

 

そしてこれは学習系のアプリだけにとどまりません。

それ以外の分野でも科学的な裏付けを元にした製品・プロダクトを作ろうと思ったら論文の読み方を身につけることは必須です。

 

しかも『学習効率本』の知識を使えば、自分がほしい情報をまとめた論文がなくても今ある論文を元に仮説を立てて開発の方向性を一定以上の確率で進めていくことができるのです。

 

 

 

試行錯誤がしやすいIT分野と相性が良いのは言うまでもありません。


それ以外でも店舗の経営から家電の開発など、むしろコストのかかる失敗できない状況ほどこの方向性の決定は強力な価値を持ちます。

 

 

 

 

 

会社経営とか起業って、ビジネスモデルや組織論だとか法的な手続きに関しての参考図書は多いです。

 

でも実際の核となる製品づくりって参考にできる本は少ないんですよね。

 

 

『学習効率本』は言ってみれば効率的な英語の学習アプリを作るための初期のミーティングをその場で見ているようなもの。

 

 

自分で何かサービス・製品を作ってみたいという人はものづくりの教科書として見ることができるのです。

 

 

 

 

『学習効率本』に対する疑問・批判について

長すぎ、冗長すぎない?

先に触れているように、この本は情報よりもむしろ結論が出るまでの試行錯誤の部分の経験がウリ。

 

市販の勉強本の「科学的な勉強法」が正しいかを見極めるにはそもそも自分自身が判断する目を養う必要があり、その手助けをしてくれているのでどうしても長くなります。

 

ある意味では長いこと自体に意味があると思っています。

 

対話形式なので普通の同じ分量を読むよりかはずっと読みやすいはず。

 

高くない?

気持ちはわかります。

 

ただ、通常の値段で本にしてしまうとターゲットとする層と分量的にどう考えても商業ベースだと採算取れないはず。

 

boothで売り出してることからも個人的にはめちゃめちゃ分厚い評論系の同人誌として考えてます。


個人的には他の勉強法の本には載っていない情報が非常に多かったので本2,3冊分くらいの価値はあったなと考えています。

 

(全巻セットで5000円くらいだったらすごく嬉しかったですけど……)

 

 

2巻以降はどこにあるの?


ふろむだ - BOOTH

(上のリンクから2巻以降を買うことができます)

 


まとめ

『学習効率本』には表と裏の2つのテーマがある。

  • 表のテーマ:勉強法で最高効率を出す方法の考え方

  • 裏のテーマ:論文の読み方・書き方と知識や新しい商品の生み出し方


表のテーマからすると受験生、資格の勉強をする社会人などすべての人におすすめ。

今までの効率アップを売りにしていた勉強本をひっくり返す新しい考え方を教えてくれます。



裏のテーマからすると大学生、大学院生、起業家、ブロガーなど先人たちが生み出してきた知的財産を使って新しいものを生み出そうとする人におすすめ。

特に大学生は卒論の前に読んでおくと非常に役に立ちます。



無料公開されている1巻へのリンク

 

ふろむだ - BOOTH

(上のリンクから2巻以降を買うことができます)




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