どうも、タイヘイです。
ホリエモンを筆頭に、犯罪を犯した有名人が復帰する割合が以前よりも増えたように思います。
そうは言っても芸能人が犯す犯罪だと覚醒剤所持が大半。
あとは賭博とか喧嘩でちょっとした傷害程度のものが多いです。
人によっては他人に迷惑かけないならそこまで大事にしなくても良いと騒ぐ方もいるかもしれません。
しかし、今日紹介するのは100%計画的な犯行に及んだガチの殺人犯の書いた本です。
正直なところ紹介するのか悩んだのですが、読んだときのあまりの衝撃からあえてスゴ本『人生を変える読書』について語ろうと思います。
出版歴のある4人の元犯罪者
まずは比較の前提として『人生を変える読書』を含めて本を出版している逮捕歴のある4人について簡単に紹介します。
1人目:堀江貴文氏
言わずと知れたライブドアの元社長です。
2006年に証券取引法違反で逮捕されて実刑判決を受けました。
執行猶予が付かなかったことに対しては色々と言われていますし本人も自己弁護していますが、企業の責任者としての監督不足はあったと思います。
自己啓発・実用書を中心に数多くの本を出しています。
ゴーストライターを使用してるのは広く知られている事実です。
2人目:佐藤優氏
元外交官です。
2002年に鈴木宗男事件に絡んで背任容疑で逮捕されました。
執行猶予も付いており、佐藤氏の著作を読んでみると仮に彼が自身に有利な記述をしているとしても逮捕に関しては国策捜査的な面が多少なりともあったと個人的には思っています。
元外交官だけあって国際関係に強く、また大学で研究した神学についても深い見識を持ち著作に活かされているのが読み取れます。
3人目:元少年A
神戸連続児童殺傷事件を起こした当時14歳の元少年です。
事件を起こした1997年に逮捕され、2004年には保護観察を終えて社会復帰しました。
『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』を2015年に出版し、物議をかもしましたが現在は出版にあたって開設されたホームページも閉鎖されており文筆家としては消えた形です。
4人目:美達大和氏
今回紹介する『人生を変える読書』の作者です。
過去に2件の殺人を犯し、無期懲役となりました。
仮釈放を許されたもののこれを放棄し、終身刑に服しています。
2009年から本を出版し始め、あるブログでは彼とやり取りされている手紙の内容が公開されています。
4人の中でどんな状況においても確実に有罪となるのは元少年Aと美達氏です。
ホリエモンに関しては無罪になるかはともかく執行猶予が着いてもおかしくないですし、佐藤氏に関しては情勢によってはそもそも起訴すらされなかったように思います。
著作の質に関しては僕の読んだ感想としては、佐藤氏と美達氏のものがずば抜けていると感じました。
では、具体的にどうすごいのか?
それについては次の項で解説していきます。
理解は出来るが納得は出来ない天才
4人の著作を読み比べてみると、各人が関わった事件についての話とそれ以外の物に内容を大きく分けることが出来ます。
それぞれが有罪になった経歴を持つ文筆家として彼らの作品を語る上で避けられないのが彼らが本を出す必然性についてです。
作家と作品は別、とはいっても内容がノンフィクション的要素を持つなら話は別。
今回この記事を書くにあたり著作以外でも彼らの経歴を一通り洗い直した結果、彼らが本を出すことととその内容について「理解できるか」「納得できるか」という2軸で僕は4人を評価しました。
理解も納得も出来ないのが元少年Aです。
彼の著作『絶歌』は出版からしばらくしてから(印税が入らないように借りて)読み、今回再読しましたが特に得られたものはありませんでした。
別に謝罪などを求めるつもりはないのですが、あの内容ではわざわざ本にする意味がないと思うのです。
元犯罪者の記録として残したいだけなら自らの著作ではなく誰かにインタビューを受ける形にするといった方法もあったかと思います。
例えば大塚英志氏の宮崎勤に対するもののような。
ただ生活苦から印税目的で書いた本という印象が拭いきれず、質も低いので本として世間に出す意味は理解も納得も出来ませんでした。
ホリエモンと佐藤氏が著作を出すのは理解も納得も出来ました。
ホリエモンはゴーストライターを使用しており、完全にビジネスとして本を出版しています。
著作は自己啓発系が多く、正直2,3冊も読んだら大多数の自己啓発書にしばしば見られるように内容の重複が多いので後は読む意味はあんまりないかなという感じです。
ただ、一定数のファンがいるのでビジネスとしてはありなんだと思います。
佐藤氏は非常に濃いコンテンツを継続して出し続けています。
経験と知識に裏付けされた政治と宗教の情報を時代に合わせてアップデートし続け、著作を出すペースも含めて現在論壇で最も活動的な作家の一人であると感じました。
作家としての立ち位置を確立しており、そしてその評価を受けるだけの仕事をしていると思います。
問題なのが美達氏です。
彼の著作は自身の罪や刑務所の中に関するものと書評にわかれます。
と言っても自信が殺人犯であるということとその内容は分かちがたく結びついており、厳密に分けきることはできません。
衝動的な犯罪者ではなく、名探偵コナンや金田一少年の事件簿といった創作ですら稀にしか見ないような計算高い犯行に及んだ彼はかなり特異な地位にいるといっていいでしょう。
彼自身が仮釈放を辞退していることからも利益を必要とする通常の出版とは意味合いが異なり、内容的にも彼にしか書けないことから彼の本が出版される理由は理解できるのです。
ではどこが納得行かないのかというと、著作を読んでいると自然と「ああ、本当に頭の良い人が書いているんだな」ということがわかるのですが、美達氏の頭が良すぎてすべて計算づくで書いているのではないかという疑念が浮かんでしまったことが理由になります。
美達氏は著作の中で自身の罪について悔いています。
『人生を変える読書』の中では彼自身を作り上げ、また犯行に至った当時と抱いている考え方が変わったきっかけとなった本を紹介しています。
そのどれもが血肉を削って書いたかのような読み応えのあるものでした。
これはゴーストライターを使ってビジネスとして本を出しているホリエモンには出せない文章の密度。
熱意を持ちながら平易な言葉で分かりやすく書評は書かれており、美達氏は非常に優れた頭脳を持っていることが理解できるのです。
しかし彼自身の罪に対する悔恨や苦悩には、書評や著作の中でたびたび触れられる彼の父に対する尊敬の念以上の熱は感じられないのです。
抑えて書いているというのもあるかもしれませんが、僕がここで感じたのは本質的には彼はやり過ぎだと感じていても必要に応じて人を傷つけることは選択肢として選びうるという信念を変わらず持ち続けているのではないかという薄ら寒さです。
書評としては非常に優れた『人生を変える読書』。
彼の文章はその巧みな論理展開と熱量から一定の説得力を持っており、彼が殺害した相手は世間一般から見たらろくでもない人物だったというのは真実のような気もします。
しかしAmazonにあるいくつかの好意的な書評のように下手に彼の側により過ぎるのは危険だとも思うのです。
本を出し始めた当初と比べると最近では美達氏の書籍の出版はペースが落ちています。
それは刑務所の中という限られた空間では本でしか知識を蓄えられない上に時間も限られているということもあるのでしょう。
彼は刑務所の中について(読書を含めて)見聞きしたことと自身の犯した罪について以外のコンテンツを持ちません。
もちろん犯罪を犯すまではヤクザに近い場所にいるグレーな社会で成功を収めており彼独自の仕事術もあるのでしょうが、それはスマホやあるいはネットが普及する以前のものであり、また彼が出す必然性の薄いものでもあります。
佐藤氏と違って様々な面において知識を素早くアップデートして新しい本を出し続けるのは難しいのだと思います。
ですが人生の中でどこかボタンがかけちがっていたら、何らかの分野において第一線で活躍し続ける熱量と才覚を持つ稀有な人物であるようにも思えるのは間違いありません。
そのモヤモヤが彼の著作を理解はできるが納得はできないものにしているように感じました。
今回紹介した著者の中では佐藤氏の本なら漫画で描かれた『憂国のラスプーチン』と『読書の技法』、美達氏の著作なら『人生を変える読書』がオススメです。
ありがとうございました!
鈴木宗男事件の裏側を描いた問題作!
元外交官の勉強法を伝授。受験勉強にも使える勉強本では1,2を争うほどのおすすめ本です。
非常に質の高い書評と同居するどこか本能に訴えかける怖さ。