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『君の名は。』考察:なぜ入れ替わり先に瀧が選ばれたのか? 二人の時間が3年ずれた理由とは?

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2016年から2017年の大ヒット映画『君の名は。』。

 

圧倒的な映像美と驚きの展開、そして描かれたのは胸を締め付けるような恋の物語。

 

一方で説明が少なかったり場面が切り替わるので、話が分かりにくいという人もいたかと思います。

 

時系列に関しては多くの人が考察しており、実際どういう順番で出来事が起きていたのかは明らかになっています。

 

しかし物語の中心にある主人公二人の入れ替わりについてはやや説明不足。

 

今日は「なぜ三葉の入れ替わり先に瀧が選ばれたのか?」を

メインテーマとして考察していきます。

 

瀧くんが入れ替わり先に選ばれた4つの説

三葉が「東京のイケメン男子に生まれ変わりたい」と願ったから

物語序盤で父との複雑な関係や巫女としての役割、閉鎖された田舎の環境に対して三葉はうんざりしています。

 

そこでつい口から出た願いは「東京のイケメン男子に生まれ変わりたい」というもの。

 

何となく入れ替わりのイメージとしては、「このときの三葉の願いを彗星が叶えた」かのように感じる方もいるかもしれませんがこれはミスリードです。

 

物語の中盤以降で三葉のおばあちゃんが、三葉が瀧と入れ替わっていることに気づいたように、入れ替わりは宮永神社の巫女としての力が起こした物。

 

つまり、このおばあちゃんの発言から巫女としての役割が入れ替わり先を選ぶことに強く関係していることがわかるのです。

 

偶然選ばれただけ?

これも先に出てきた巫女としての役割を果たすという理由を満たすことが出来ません。

 

ところで実は公式の外伝小説で既に亡くなっている三葉の母、二葉が三葉の父である町長の俊樹と出会った話が描かれています。

 

瀧と三葉の行動の結果として、町民の多くを直接的に救ったのは町長である俊樹であることからも巫女としての力は基本的に人を救うためにあると考えて良いでしょう。

 

公式外伝小説は映画で描かれなかった部分が補完されていてファンなら必読!!

 

100%相性の良い男女=運命の人を選んだ

話のメインが恋愛である以上、これを否定することはできません。

 

そして『君の名は。』作中では瀧と三葉以外にもう2組の男女の関係が描かれているのもこの相性の良さの重要性を補強しています(テッシーとサヤちん、奥寺先輩と司のこと)。

 

特に重要なのは奥寺先輩と司の関係です。

 

ラスト付近で奥寺先輩は結婚するorしたことを示すように指輪をしています。

実は裏設定でこの相手が瀧の友人である司(メガネの方)なのです。

 

作中の描写的にも、

  • 三葉が中に入っていたときの瀧に対して奥寺先輩は好意を抱くし、司もかわいいとつぶやいている
  • 成人しておりおそらく大学生の奥寺先輩がまだ高校生の司の誘いで瀧の糸守探しについてきている(しかも結果的に泊まり)
  • 糸守を探す最中、電車内の席順とお菓子を食べる描写、トランプで遊ぶ二人の様子、ラーメンを頼んだ時の息の合い方

と二人の感性が似通っていること、相性が良いことが分かります。

 

これは付き合うだけならともかく、年の差がありながらも結婚までいっていることからかなり相性が良いことが必要でその現れではないでしょうか。

 

本来の時間の流れでは瀧は三葉の3つ下になり、それを超えるだけの相性の良さというのは確かに必要になりそうです。

 

巫女の力で人を守ることのできる人を選んだ

先に三葉の両親の出会いに関して述べたように、巫女としての役割のために彗星の災害に対処できる人であるというのが入れ替わりを選ぶ基準になっていそうです。

 

ここまでをまとめると、

「相性の良さ」+「彗星に対処する力」の二つが必要になりそうです。

 

作中での描写がない、つまり根拠のない説の一つとしては、瀧くんの方にも宮永の血が流れているというものもあります。

 

ですがこれはあまりに説明不足ですし、この後に語る入れ替わり時におきている3年のズレに関しても説明がしにくいので却下します。

 

 

なぜ二人の入れ替わりには3年間のズレがあったのか?

お話の都合

これは否定できませんが、それならズレはもっと大きくても小さくても良かった事になってしまいます。

 

特に意味はないが、しいて言えば三葉の名前に3の文字が入っているから

お話の都合に近いですが、まだこちらがマシでしょうか。

もっと言葉や文字をテーマにしたお話ならこちらの可能性もあったかもしれません。

 

過去を変えるためには試練を乗り越える必要があったため 

時間が経つと入れ替わりの記憶は消えていきます。

そしてもし二人が入れ替わるのが瀧くんが中3か高1のときだったら?

 

結構な被害が出た彗星の災害のことです。

 

まだ強く覚えている可能性もあるのではないでしょうか?

 

そうなると口噛み酒を使わずに奥寺先輩とのデート以前、つまり三葉が中学生の瀧くんに会いに行く前に未来の情報を使って周りを説得して歴史を変えることができてしまうのです。

 

(バック・トゥ・ザ・フューチャーでスポーツ年鑑を使うように)

 

それだとあまりに安直に世界が変えられてしまいます。

 

この時差はお話を作る都合というだけでなく、記憶を失うという試練を越えないと願いは叶えることができないということではないかと思います。

 

実際、おばあちゃんによって世界を越えるときは自分の大事な物を置いてくる必要があると世界を変えるリスクについての語りもありました。

 

世界を変えるだけの絆があるか?

それをはかるための時差という可能性はありそうです。

 

二人の絆を短い期間で深くするために同い年にする必要があった

これもありそうな話です。

 

先に説明したように奥寺先輩と司は年の差があっても結婚までいきますし、三葉の父と母も年齢は12歳離れています。

 

相性の良さもあると思いますが、この2組にはその絆を育むために少なくとも年単位の時間があったわけです。

 

ですが瀧と三葉の入れ替わりが始まってから彗星が落ちるまでの時間は実は1ヶ月程度。

 

もしこれが中2の瀧と高2の三葉では話があんなにすんなり行かないというのは想像できそうです。

 

つまり、巫女の力の一環として互いを理解しやすくするために時間をずらしたというのが一つの可能性としてありえるのではないでしょうか。

 

(巫女の力の延長として二人が再会するきっかけとなった口噛み酒が出来るまで3年というのもありえるかと思って調べたりもしました。

ですが調べたところ口噛み酒が出来るのにはそんなに長い時間をかけなくてもできるということでこの案は却下。)

 

瀧くんが三葉や他の人々を救えるほど成長するのに3年が必要だった

二人の関係を一旦置いて巫女としての力を持つ理由から考えるとこの説が出てきます。

 

三葉は彗星が落ちる前日、瀧くんに会いに行きます。

ですが記憶がないという以上に忘れてはいけないのが瀧くんはまだ中学二年なのだということ(中間テストの勉強中?)。

 

一方で高校2年のテッシーとサヤちんは育った環境もあって防災無線のジャック、発電所(変電所?)の爆破、違和感のない避難放送をこなしています。

 

しかしもし仮にこの二人が中学2年だったらあそこまで計画はスムーズにいかなかったのではないでしょうか?

 

彗星の落下から三葉に会いに行くまでの三年間で瀧くんは、

  • 一人で見知らぬ土地に人を探しに行こうとする行動力
  • アルバイトをこなして稼いだ資金力と自分のことをある程度なんとか出来る力
  • 三葉と入れ替わるまではそれほど進展していなかったけれど奥寺先輩に対する憧れから恋を知ったこと

などを身に着けたのだと思います。

 

そしてもう一つ重要な点。

 

それは瀧くんが絵を得意としており、その技術も成長していたのではないかということがあげられます。

 

時間のズレに気づかない、周囲の反応の不自然な点の謎

瀧くんと三葉はスマホ(iPhone)を使用していますが、このご時世で学校に通っている二人が曜日のズレ、つまり自分たちのいる時間がズレていることに気づかないのはおかしいと感じませんでしたか?

 

(黒板に書いてある日付、バイトのシフト確認、TVのニュースなどなど)

 

もちろん、入れ替わりは夢に似たものなので細部を覚えていないというのはあるかもしれません。

 

実際に口噛み酒を奉納しに行った日は瀧くんは制服を着て突っ込まれていました(3年のズレで休日だった)。

 

ですがそれだけでは周囲の不自然な反応に説明がつかない点が出てくるのです。

 

瀧くんが三葉に再会する前の世界では糸守に彗星が落ち、数百人を超える死者が出ていますがこれはかなり大きな災害に分類されます。

 

ネットがあるなら画像検索もありますし、ちょっと調べたら出てくるはずなのです。

 

ですが飛騨まで出かけて、しかも糸守出身者を見つけるまで糸守の情報は出てきていません。

 

このことから、過去を変えることに繋がる情報には何らかの制限がかかっていることが推測できます。

 

先に上げた試練を乗り越える必要がある説ですね。

 

実際に瀧くんの携帯に残された三葉のメモは消えてしまっています。

 

しかし、時間を越えても消えなかったものが実は二つだけ存在しているのです。

 

一つは中学2年の瀧くんに三葉が渡した組紐

もう一つは、瀧くんが三葉のことを忘れないように描いた糸守の絵なのです。

 

特別な役割を背負った普通の女の子と、何の役割も背負っていないけどちょっとだけ変わった男の子

 

これは3年ずれた理由というよりも瀧くんが選ばれた理由のまとめに近いですね。

 

三葉が巫女という役目を負いながらそれ以外はいたって普通の女の子である一方、実は瀧くんは少しだけ普通の男の子とは違います。

 

喧嘩っ早いと言われ、実際に冒頭では頬に傷を負っていた瀧くん。

おそらく三葉と入れ替わっていなければバイトでクレームをつけてきた客と喧嘩になっていたのではないでしょうか?

 

その性格の原因の一つがおそらく父親と二人で暮らしていること。

 

新海監督は瀧くんの母親と父親は離婚したのではないかと語っていますが、もし死別ではなく離婚なら父親に子供がついていくといのは珍しいケースです。

 

父親が霞が関勤務のエリートだから?

描かれていない母親があまりにひどかった?

学校は遅刻してもいいからちゃんといけという程よい放任主義が気に入ったから?

 

詳しい理由はわかりませんが、おかしいと言えるほどすごくズレてはいないけど、ちょっとだけズレているのが瀧君なのです(そして母がいないことは三葉の境遇に近いものがあり、ふたりが互いを理解し合う手助けになっている、かも)。

 

そう考えると高校2年の男子が普通に食事を作ったりするのも普通からはちょっとズレています。

 

そしてその「ちょっとしたズレ」の最たるものが「絵の上手さ」なのです。

 

三葉が自分で作り、身につけていた組紐は時を越えて残りました。

 

そして瀧君が書いた糸守の絵もまた、その意味は忘れても残ったのです。

 

絵の上手さは才能か努力かはわかりませんが、間違いなく糸守を描いていたとき瀧君は並々ならぬ熱意を込めていました。

 

絵そのものではなく、そこに込められた熱や感情が伝わって糸守出身のラーメン屋のおじさんの記憶(連鎖して司たちの彗星に対する記憶)を呼び起こしたのではないでしょうか。

 

彗星は3回落ちていて、世界は3回変わった説

彗星は御神体のある山のクレーターを生み出したものと、

糸守湖を作ったものと、

三葉が生きているときの3回落ちたと考えることもできます。

 

それなら今回の瀧と三葉のように、以前にも入れ替わりと口噛み酒を使って命を救われた男女がいたのではないでしょうか?

 

1回目は過去を変えるためにそもそも1年ずらす必要があり(1年なのは地球の公転周期)、

2回目は既に変えた世界をさらに変えようとしたので2年ずれ、

そして瀧と三葉が3回目に世界を変えようとしたので3年ずれているという理屈ですね。

 

これは御神体の山のクレーターと糸守湖を作った彗星が別々の時期に来たという条件が必要ですが、結構可能性としては高いのではないでしょうか?

 

もし御神体の山のクレーターと糸守湖が同時にできたものだとしたら、他に有り得そうなのは作中で語られた「繭五郎の大火」のときに世界が変わったという説もありそうです。

 

繭五郎に関しては一葉(ばあちゃん)、二葉(亡くなったお母さん)、三葉、四葉という数字に続いているので気になりますがほとんど触れられていないので確度の高い考察は難しいのが残念です。

 

実は未来人と入れ替わった説とかもあるかも?

 

いずれにせよ、入れ替わりと口噛み酒によって世界を変える度に1年ずつ時間がずれているという説はそれなりに説得力があるものと思います。

 

まとめ

長く考察してきましたが僕の考察のまとめとしては、

  • 瀧くんが選ばれた理由:「三葉との相性」+「性格や絵の技術など複数の要因から三葉と再会して過去を変えられる可能性があったから」
  • 入れ替わりが3年ずれていた理由:「歴史を変えるための試練」「短い期間で二人の絆を強くするため」「世界が変わるのが3回目だから」

とさせて頂きます。

 

直接的には入れ替わる相手に瀧くんが選ばれた理由や3年間の時間のずれの理由は語られていません。

 

ですが、偶然ということはないのではないでしょうか。

 

作品の語られていない部分は見ている側の想像や解釈次第だと僕は思っています。

 

あなたはどんな説が好きで納得できそうですか?

 

いろいろ考えながらもう一度作品を見直すのも面白いですよ!

 

 

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小説は本当に素晴らしい出来なのでもう一度紹介。