スポーツ選手、芸術家、発明家、学者……。
歴史に残る人物からちょっと売れたお笑い芸人まで、様々な人が「天才」と呼ばれています。
ですがそもそも天才とはいったい何なのでしょうか?
この記事では天才と呼ばれる有名人の具体例からその特徴を取り上げ、天才に必要な要素をまとめます。
もし天才の特徴を上手く理解することができたら、自分も天才に少しだけ近づけるかも?
幅広い分野から例となる有名人を集めましたので、自分の知っている人があげられているかを確認する気持ちで楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
天才の特徴:何を持って天才とするか?
この記事の結論としては、
天才とは業績=アウトプットによって評価されるもの
ということになります。
才能や能力を持っていてもそれを磨いて発揮して人に認められなければ意味がないということですね。
では、なぜそうなるのかを見ていきましょう。
性格や癖は特徴の一部でしかない
よく天才というと、内向的で人付き合いが苦手、マイペースで集中力がすごい。
あるいは、わがままで飽きっぽい、非常識なところがあるが得意分野はずば抜けている。
そんなイメージがあるかもしれません。
確かに天才と呼ばれる有名人のエピソードを聞いたりするとそんなイメージを持つのも当然ですね。
ですが果たして、例えばわがままで飽きっぽい人が天才なのでしょうか?
天才がわがままで飽きっぽいことはあるかもしれませんが、その逆が正しいとは限らないのです。
そして、すべての天才がわがままで飽きっぽいというわけでもありません。
後で触れる天才の一部、ギフテッドやサヴァンと呼ばれる人々の性格やこだわり、癖が一定の傾向を持つことは確かです。
ですが、その傾向を持つことがすなわち天才ではないということには注意が必要です。
性格や癖といった特徴は、天才の定義にはならないのです。
能力で考える:天才・秀才・凡人の差とは?
では、能力で比較してみたらどうでしょうか?
一般の人と比べて高い能力を持つ人間を天才と呼ぶことはできるでしょうか。
単純に能力が優れている人を天才、そうでない人を凡才とする分け方は非常にわかりやすいですね。
悪くない分け方かもしれません。
ですが、普通の人に比べて優れている人を秀才と呼ぶこともしばしばあります。
では天才と秀才の違いとは?
天才は秀才よりもさらにずば抜けた能力を持つ人、と考えることもわかりやすいです考え方ですね。
秀才ではどんなに努力してもけっしてたどり着けない能力を持つのが天才。
あるいは、同じ能力を身につけるまでにかかる時間、成長速度が天才はずば抜けているという分け方もあるかもしれません。
能力の高さと成長速度、この2つを兼ね備えた人を天才と呼ぶのは十分にありえそうです。
客観的な指標を求めて:IQ・ギフテッド・サヴァン・発達障害
とはいえ、能力の高さと成長速度は計測はできそうですがその基準はどれくらいになるのでしょうか。
一般的な「頭の良さ」を測る指標としては長くIQ(知能指数)が使われてきました。
学校の検査で受けたことがある人も多いかと思います。
高いほど優秀とされ、100を平均として、70を下回ると知的障害と診断されることもあります。
世界的な高いIQを持つ人々の団体、メンサの会員になるには上位2%のIQである130以上を出す必要があり、これも一つの天才の指標となるでしょう。
ですが一方でIQだけで判断しても良いのでしょうか?
例えばIQだけで考えると軽度の知的障害があったとされる放浪の天才画家と呼ばれた山下清が天才からは外れてしまいます。
芸術の他にもスポーツでも多大な業績を残した天才と呼ばれる人々も大勢いますね。
あるいは学問の分野でもiPS細胞でノーベル賞を山中伸弥教授とともに受賞した、ジョン・ガードン教授は8歳のころのIQテストでは低い点数で、高校時代の生物の成績は学年最下位だったそうです。
最近ではIQ自体にも「成功にはIQと同じかそれ以上に他人や自分の感情を理解したり制御する能力、EQが必要だ」なんて話も出ています。
IQは確かに天才の一つのあり方かもしれませんが、それだけではどうやら不足のようです。
そんな中で最近取り上げられることが多くなってきた天才の指標としてはギフテッドがあります。
IQが知能指数だけを見るのに対し、ギフテッドは知的能力以外にも、例えば数学をもっと学びたいというような目的意識、ゴミを分解して役に立つものを生み出す創造性というような特徴も重視します。
ギフテッドは(場所によって基準に差はあるものの)主に知能指数であるIQを中心として判定されますが、頭が良いだけでは選ばれないこともあるということですね。
IQ以外の面で見ると、特化した能力を持つことの多いサヴァン症候群があげられます。
自閉症や知的障害を持ちながら、数多くの言語を操ったり、数字に対して圧倒的な記憶力を有していたり、一度聞いただけの曲や見ただけの写真を再現することができたりする能力を持つ人々のことです。
彼らの能力は普通の人とは隔絶しているという意味においてまさに天才的と呼べるでしょう。
また、サヴァン症候群ほどではないにせよ、広い意味での発達障害である注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群、学習障害(LD)といった症状もだいぶ知られるようになってきました。
これらの症状を持つ人々も特化した能力を持つことがあり、芸能界やスポーツで活躍していて天才と呼ばれることもあります。
これらの人々が持つ性格や癖の特徴が最初に触れた、飽きっぽい・こだわりが強い、内向的・コミュニケーションが苦手といったわかりやすい特徴であることが多いのですね。
歴史に残る天才は業績=アウトプットで評価されている
以上を踏まえて、この記事では天才を2種類に分けようと思います。
1つは、隠れた天才。
高いIQや知能指数、もしくは特化した能力のいずれか(あるいは両方)を持ち、普通の人に比べると高い能力を持っている人々のことです。
ただし成功しているとは限らず、コミュニケーション能力のせいで生きづらさを抱えていたり、環境のせいで力を発揮できずにいたりする人を指します。
もう1つは、業績による天才。
高い知能や特化した能力は持っていても持っていなくても良い。
ただし何らかの分野、もしくは複数の分野で普通の人がかなわないほどの結果を出し、それが認められた人々を指します。
業績・結果=アウトプットから判断するので本人は天才という評価に納得いかなかったりするかもれません。
1つの能力自体は普通の人に比べてずば抜けていると言えるほどではないこともあります。
しかし複数の能力の組み合わせや力を活かせる環境を整えたり味方を増やすことに長けていたり、結果を生み出すだけの何かは必ず持っています。
最終的に天才は業績、つまりアウトプットによって評価される。
それがこの記事の結論です。
能力が高くてもそれを活かせなければ認められない。
だから能力そのものと同等以上に力を発揮することも重要だということですね。
この後は、その業績を生み出すアウトプット力、アウトプットを生み出すインプット力、力を発揮するための環境、生まれ持った才能の4つについて具体的な有名人の例をあげながら見ていきます。
天才と認められる業績を支える能力のイメージ
アウトプット力=成果を出す力
まずは天才と人々に認められるのに必要な成果を出す力、アウトプット力について見ていきましょう。
成果の種類
新しいものを生み出す:マイケル・ファラデー
高校の化学ではファラデー定数というものを習いますが、物理と化学の電磁気分野で様々な理論を発見しまとめたのがファラデーです。
彼は電磁気を使って電気を生み出す発電機を発明しました。
今の社会が電気なしには絶対に成り立たないことを考えると、ものすごい影響力ですね。
ファラデーに限らず、天才の一つのパターンに新しいものを発明・発見するというものがあります。
蒸気機関車を生み出したスチーブンソンとか、iPhoneを生み出したスティーブ・ジョブズとかのことですね。
実際にはそれまでの研究の積み重ねがあったり、支援してくれるパトロンの存在や挑戦を許してくれる社会といった環境も要因にはあります。
ですがわかりやすい天才として、新しいものを生み出す天才というのはこれからの時代も常に現れることでしょう。
既存分野で他の人を質で圧倒的に上回る:ウサイン・ボルト
陸上短距離の世界ほど成果がわかりやすいものはありません。
その点で見て、ウサイン・ボルトは間違いなく天才でした。
言わずと知れた100mの世界記録保持者であり、150m、200mでも世界記録を保持しています。
オリンピックで獲得したメダルはリレーも含めると驚愕の8個。
才能の世界と言われる短距離でここまで圧倒的な成果を出せた人は他にいないでしょう。
スポーツ選手は勝敗や成績がはっきり出るので、天才と呼ばれる人も数多くいますね。
世界的な記録というと、メジャーリーグの最多安打記録を持つイチローや、スキージャンプ女子ワールドカップの勝利数で記録を持つ高梨沙羅選手などがいます。
また、他の人の質を大きく超えると新しい挑戦を始めるのが人間です。
その点ではフィギュアスケートの羽生結弦選手がそれまで誰も成し遂げたことのなかった4回転ジャンプを成功させています。
質を突き詰めると新しいものが生まれることもあるのは天才の評価としては非常に面白いポイントになるかもしれません。
そこまで有名人でなくても、営業成績が会社に入ってからずっと一位だとか、仕事がめちゃくちゃ速くてしかも丁寧な頼れるエンジニアとかもいますよね。
こういった人たちも身内から天才と呼ばれることがあります。
もし何かきっかけがあって講演をしたり本を出したりしたら、こういう人は世間からも天才と呼ばれるかもしれません。
触れてきませんでしたが、重要なポイントとして天才の中でも知名度や能力や業績の点で差があるというのは忘れないでいたいところです。
羽生結弦選手がオリンピックで金メダルで、宇野昌磨選手が銀メダルだとしても、両方とも天才でももちろん良いのです。
成果を生み出す力
業績や成果そのものを見たところで、いよいよそれを生み出す力について見ていきましょう。
行動力
好奇心:レオナルド・ダ・ヴィンチ
天才に必要なこと。
何か大きな業績を上げるためにまずは物事をはじめる、挑戦することが必要です。
天才と呼ばれる人の一部は興味の幅が極端に狭い一方で、一部は好奇心旺盛で様々な分野に関心を示します。
幅広い分野に好奇心を持っていた人物といえばダ・ヴィンチをおいて他にはいないでしょう。
モナリザや最後の晩餐のような絵画で芸術家として有名ですが、ダ・ヴィンチ手稿と呼ばれる数え切れないほどのノートを残しました。
その分野は芸術に関係の有りそうなものだけにとどまりません。
数学や物理学、天文学や軍事技術まで無数のアイデアが残されているのです。
特に本当!?と疑ってしまうのは今から500年も昔にヘリコプターのようなものをイメージしていたとか。
なにかに興味を持ち、行動を始めなければ何も生まれない。
でも多くのものを知ることができれば素晴らしいものが生まれる。
そんなことを教えてくれるのがダ・ヴィンチです。
やりきる力:トーマス・エジソン
何かを興味を持って始めたら、天才と呼ばれる業績を出すまで努力を継続する、やりきる力が必要です。
発明の数も多いですが、その発明にたどり着くまでの過程がエジソンの最大の特徴でしょう。
小学校を退学になったのは有名な話ですしそれでも母親の手助けもあって学ぶことを辞めませんでした。
有名な逸話では白熱電球の発明がなんと言っても最高です。
(実際には発明というより実用化と言ったほうが正確ですが)
電球の一部であるフィラメントに向いている物質を求め6000種もの材料を試し、どうやら竹が良いと分かった後は世界中から1200の竹を集めました。
そして最終的に京都の竹が一番良いということにたどり着き、白熱電球の完成につながっていきます。
なんと言ってもこれが1880年代~90年代の話ですからね。
日本がようやく国際社会に参加し始めたかしていないかの時代に、そこまで執念を持って手を尽くしていたわけです。
アニメや漫画の天才って意外と一度壁にぶつかると脆いような描かれ方をよくされますが、本当に成果を出す天才はメンタルが違うのです。
努力できることも才能という人もいますが、個人的には普通の人が真似できるとしたら、この努力とか諦めない心が一番だと思います。
質の高さ
スキル:パブロ・ピカソ
天才のアウトプットが圧倒的なのはやはり根底には技術やスキルの高さがあります。
特にそれが顕著なのが芸術分野。
絵画や音楽の世界では基礎的な技術の高さは比べやすいと言われていますね。
ピカソというと写実的な絵とかけ離れた特徴的なキュビズムが代名詞ですが、その根底には圧倒的な技術の下支えがあります。
ピカソは8歳の時点で大人顔負けの技術があり、11歳の頃には既に現代の美大生並のデッサン技術を身に着けていました。
16歳で旧来の様式の絵画で賞を取りましたが美術学校の授業からは新しいものが生まれないと悟った後に中退。
その後、様々な試行錯誤を経て少しずつ私達の知るキュビズムへの道を進んでいきます。
現代でもピカソは非常に評価されていますが、もし彼が基本的な技術を身に着けていなかったら彼の作品は評価されていたでしょうか?
一見奇抜に見えるものでも、しっかりと学んだ人からはその根底にあるものが理解できる。
そんな骨太な部分があるからこそ奇抜さにも意味があるのだと評価されているはずです。
ピカソの技術を支えたものは才能や環境だけではなく、生涯を通して1万点以上もの作品を生み出した質を培うための量にもあります。
結局の所、質を上げるには量が必要で、量をこなしてもそこに試行錯誤がなければ意味はないのです。
技術の高さと量の重要性。
それを教えてくれるのが天才、パブロ・ピカソだと言えるでしょう。
こだわりの強さ:黒澤明
質を生み出すのは量の他に、こだわりの強さがあります。
自分の求めた水準を超えなければけっして認めない、そんな頑固な部分を持つ天才は多いです。
製品のデザインにおけるスティーブ・ジョブズなども有名ですが、ここでは世界に認められた天才映画監督、黒澤明を見てみましょう。
実際に撮影で本物の矢を人に対して射つ、邪魔になるので家を壊す、役に合っていないと新人俳優の歩き方を何度も撮影し直す……。
エピソードには限りがないですが、個人的にすごいと思うのが『羅生門』のセット。
写真で見たことがあるかもしれませんが、見るものを圧倒する巨大なセットを建設し、しかしその細部にもこだわりなんと4000枚もの瓦をわざわざ焼いて準備したとか。
天才と言われる人たちの中で賛否両論あるのがこのこだわりの部分。
こだわった結果、多少人に迷惑をかけても間に合えばよいのですが、漫画家などは原稿が締め切りに間に合わなかったり長期休載になってしまったり……。
優秀なプログラマーなどは手が速いのも天才の特徴ですが、映像作品などひとつ作るのに時間や手間がすごくかかる分野に関してはやはりこだわりの強さも必要なのかも知れませんね。
判断力・正解を選ぶ力:ビスマルク
経営者や政治家が他の分野と大きく異なるのは、一つ一つの選択の影響の大きさ、取り返しのつかない部分です。
彼らに求められるのは徹底的に問題を分析し、最終的には自らの判断で正解の選択肢を選び取ること。
自分ではコントロールできない部分も多く、優秀でも失敗したり、逆に能力はそれほどでなくてもたまたま運が良くて成功する人もいます。
なんと言ってもビスマルクが天才と呼ぶに値するのは、首相としての在職期間の長さ。
それだけ失敗しなかったということの証明でもあります。
プロイセン王国(現在のドイツ)の首相として28年もの間、首相の座にあり続けました。
「鉄血宰相」としての異名を世界史の教科書で知って覚えている方も多いのではないでしょうか。
フランス革命とナポレオン以降の混沌とするヨーロッパ情勢の中、国内でも国外でも常に難しい選択を迫られる毎日。
そんな中でビスマルクは首相という国王を除いたトップまで上り詰めるだけではなく、30年近くもその職を守り続けたのです。
国内政策でも優秀ですが、特筆すべきはやはり外交。
巧みに周囲の国と同盟関係を結び、フランスを孤立させるビスマルク体制と呼ばれる外交関係を構築しました。
普通、同盟は戦争で勝つために仲間を作ったり敵を減らしたりするのに使うことが多いと思うじゃないですか。
でもビスマルクは大国フランスに戦争に勝った後、報復を避けるためにこの体制を防御のために構築したんですよ。
鉄血宰相という硬いあだなからは強硬策のイメージが浮かぶんですが、その状況に応じてときには自分の意見や考えを柔軟に変えて政策を変更するバランス感覚を持っていたんですよね。
政治家の評価は視点によって変わる部分もあるので難しいんですが、それでもやはりビスマルクは判断力という点においては天才だと言えるでしょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力って天才とはイメージが違うかもしれません。
でも、政治や軍事だったり現代の組織運営では必要となる能力です。
とかくひとくくりにされがちな能力ですが、ここではもう少し細かく分けて見ていきます。
リーダーシップ・カリスマ:織田信長
日本史で一番有名人といったら織田信長で文句は出ないんじゃないでしょうか。
イメージとしても普通の人とは違った感覚を持つ天才肌というのが定着していると思います。
この時代の大名・殿様って家臣から忠誠を向けられていたイメージがドラマなんかでありますけど、実際はそうでもなかったんですよね。
裏切りとかが当たり前で、そこまでいかなくても気に入らない主君を見捨てることは普通にありました。
織田信長が頭角を現したのはやはり桶狭間の戦いです。
敦盛を舞った後、奇襲をかけ見事に今川義元を討ち取りました。
もともと信長って、うつけ者って言われていたくらいですから織田家の当主としての人気はそこまでなかったんですよね。
それでもいざ動き出すとなると自信たっぷりで有無を言わせない迫力がある。
結果として家臣たちはついていかざるを得ない。
いわゆるワンマン社長なんかもこんなタイプかもしれませんが、天才と言えるほどの功績を残せた人ってほとんどいないんじゃないでしょうか。
共感力・人心掌握:豊臣秀吉
豊臣秀吉は織田信長の部下だったわけですが、結果として信長が裏切られて終わったのに対し、秀吉は事実上のトップまで上り詰めたんですよね。
じゃあ二人の違いはどこかというと、人の使い方。
秀吉はよく「人たらし」と称されるほど本当に人に好かれていました。
信長の草履を温めておいたという逸話も有名ですが、とにかく人がほしいものを見抜くのが上手かったんですね。
そして逆を言えば、人が何をされると嫌なのかもよく分かっていた。
共感力とそれを生かした人心掌握術がすごかったんですね。
だからこそ勝つことができたんです。
あまり目立たない能力かもしれませんが、現代で何か社会にインパクトを与えるような成功にはかなり重要な力なのは確かです。
政治家にせよ、経営者にせよ社会を変えるには組織で動く必要がありますからね。
組織化能力:徳川家康
信長、秀吉と来たら当然次は家康ですね。
秀吉がトップまで上り詰めてなぜその後が続かなかったのか。
それは後継者問題があったからです。
それに対して家康は265年にも及ぶ徳川家が支配する強固な支配体制を整えました。
秀吉の能力が個人のコミュニケーション能力に大きく依存するものだったのに対し、家康はより長い安定を求めて組織を作り上げたわけですね。
現代でも一時的に画期的な商品を生み出したりする会社は少なくありませんが、それを継続させるのは至難の業。
個人の才能か、組織の力か、という比較も面白そうですが、そもそも強い組織を生み出すにはそれを作り上げる天才の力が少なからず必要だと思うのです。
機転の利かせ方:明石家さんま
コミュニケーション能力の後半は芸能界から。
テレビを見てるとあまり気づかないかもしれませんが、喋りのうまい芸人さんのトーク技術は天才と呼べるものがあると思います。
その中でも特にすごいと感じるのがさんまさんの機転の利かせ方。
この思考の瞬発力とでも言うべきうまい返し方ってどこから来てるのかと思ったら、もともとは落語家だったんですね。
台本を書いてネタをしっかり作り込んでくる漫才師と違って、落語家はネタの他に大喜利する力も求められたりするのを考えると納得です。
外から見てると意外とできそうだな~と思って、実際にやってみると全然できないタイプの能力の筆頭がこれだと思います。
言語化能力:古舘伊知郎
さんまさんの能力が対人の会話の中やとっさの問いかけで生かされるものだとしたら、アナウンサーである古舘伊知郎さんの能力は状況を説明する実況で本領が発揮されます。
本来はもっと幅広く説明するのがうまい教師とか、自分の思い描いた情景や人の内面を描く作家なんかが高い能力を持っているはずです。
古舘伊知郎さんの場合、それを即興で行えるのが天才と言えるずば抜けた部分だと思います。
天才って何を考えてるか分からない、本人も自分がやっていることをうまく説明できない、みたいなことも多々あります(選手時代の長嶋茂雄さんとか)。
一方で言語化能力に長けた天才ももちろんいるということです。
特に学問の世界なんかだと自分の発見や考えをしっかり人に伝えて認められないといけないので重要だったりするわけですね。
インプット力:アウトプットを生み出す源泉となる能力
成果であるアウトプットに関連する能力を一通り見たところで、それを生み出す大本にある学びの力であるインプット力を見ていこうと思います。
いわゆる学問的なわかりやすい天才というのはこの能力に長けていることが多いイメージです。
記憶力:ジョン・フォン・ノイマン
記憶力というのは天才を表現する上で非常によく使われるバロメーターですね。
一度読んだ本や聴いた授業の内容を全部覚えているとか、将棋や囲碁で対局内容を全部覚えているとか。
ノイマンは数学、物理、コンピュータなど様々な分野に貢献した天才です。
原爆の開発にも関わっていたのですが、結局そのときに浴びた放射線の影響でがんになりなくなりました。
彼の能力の根底の一つには映像記憶能力があったとされています。
写真のように見ている映像、情報をそのまま記憶しておけるという圧倒的な記憶力のことですね。
記憶力がずば抜けているということは他の人より理解や応用に使える時間もあるということ。
覚えるだけでなく、新しい理論を生み出したり、現在のコンピュータの元となる原理を開発したりもしています。
学校の勉強や資格試験の準備なんかしていると、やはり驚異的な記憶力というのは憧れる能力ですよね。
理解力:アイザック・ニュートン
記憶力と同じくらい重要なインプットの能力が理解力です。
一を聞いて十を知るように難しい理論でも一度で理解できる能力があればどんなに学校生活は楽になることでしょう。
そんな理解力を持つ天才たちの中でもニュートンがずば抜けているのは、本質を理解する力。
今のギフテッドと呼ばれる人たちがものすごい速度で学問を修めて飛び級したりできるのは、結局の所、先人たちが一定の手順を踏めば理解できるように学問を築き上げてきたからです。
一方でニュートンは数学を用いて現代にまでつながる基本的な物理学をたった一人でまとめてしまいました。
この衝撃は大きく、ニュートンがそれまでとその後の科学のあり方を根本的に変えてしまったのです。
りんごが落ちるのを見て引力の存在に気づいたという有名な作り話もありますが、子どもでも分かるくらいにシンプルに説明できるというのは深い理解力がなせる技なのでしょう。
環境
ここまでは直接的にアウトプットにつながる力とその基礎にあるインプット力を見てきました。
ここからは天才の育ってきた環境についていくつかまとめていきます。
もしかしたら、生まれ持った才能以外にも天才が育つ条件があるのかも?
それが分かるなら私たちも天才になれるかもしれません。
モンテッソーリ教育:ビル・ゲイツ、藤井聡太
幼少期から英会話をさせたり、様々な教育方法がありますが、特に多くの有名人で成果を出している人が多いのがモンテッソーリ教育です。
特にIT分野では非常に多く、
パソコンを世界中に普及させたWindowsを生み出したマイクロソフトのビル・ゲイツ。
Amazonを生んだジェフ・ベゾス。
グーグルを生んだラリー・ペイジにセルゲイ・ブリン。
Facebookを生んだマーク・ザッカーバーグと数え切れないほどです。
以外なところでは最年少で将棋のタイトルを取った藤井聡太さんもモンテッソーリ教育を受けていました。
モンテッソーリ教育では年齢や発達段階に応じて特殊な道具を使って遊びながら様々な動作と集中力を鍛えていきます。
実際に横から見ていると、それほど特別なことをやっているようには見えなかったりするのが不思議です。
幼いお子さんのいる方はモンテッソーリ教育について調べてみると良いかもしれません。
コーチの重要性:ジョン・ウッデン
少し本題からずれるかもしれませんが、才能を磨き上げて能力になるまで育てるには指導者やコーチの助けが必要です。
本人の努力で克服できる部分もありますが、特に競争相手がいるスポーツの分野などでは相手にもコーチがいるのですからその差はより重要になるでしょう。
ジョン・ウッデンはアメリカの大学バスケットボールでの伝説的なコーチです。
それまで負け越していたチームを鍛え上げ、12年間で全米大会で10回優勝を成し遂げました。
日本の甲子園で12年で10回優勝するチームがもしいたら、と考えたらどれだけすごいかがわかるかもしれません。
プロのチームと違って大学のチームですので、当然チームメンバーは定期的に入れ替わります。
それでも勝ち続けたということは、つまりそれだけコーチの影響力が大きかったということです。
ウッデンは非常に人格的に優れた人物で、技術的な指導はもちろん、むしろ当たり前の遅刻をしないことや悪口を言わないことを重視しました。
一見するとチームを強くするのに直接は役に立たないように思いますが、重要なのは選手との信頼関係やチーム内の雰囲気を良くすることだったのだと思います。
どんなに技術的な指導が優れた指導者、コーチであってもその人のことが尊敬できなければ教わる側は話を聞こうとはしません。
設備や物はお金を出せばかなりそろえることができますが、優秀なコーチや監督はそもそも人数自体が非常に少ないのです。
遅咲きの天才を作った環境とは:ジュリア・チャイルド
環境を良くしてもそれは幼少期か、せいぜい学生の頃までの話で、大人になったら意味がないという人もいるかもしれません。
そんな人に対する反論にはジュリア・チャイルドがいます。
後に料理人として有名になる彼女は裕福な家に生まれました。
家には専属のシェフがいましたが、彼女が子供の頃は料理には興味を持たなかったようです。
彼女の運命を決定的に変えたのは夫であるポールとの出会い。
ポールは非常に美食家で、仕事のために夫婦そろってパリに移り住むことに。
そこで初めて食べたフランス料理で彼女は料理に目覚めたのです。
料理学校に通い、シェフに教えを受け、やがてジュリアは料理教室を始めるまでになります。
やがてヨーロッパを巡ったあと彼女はアメリカに戻りました。
するとそれまで書き溜めたレシピ本を出版したことでテレビに出ることになり、そこで料理を披露したら番組を持つことになり彼女は一躍有名人に!
ちょうどアメリカだと1960年代くらいでカラーテレビが普及した年代のことです。
彼女はアメリカの食卓に大きな影響を与え、その能力を認められたのです。
20歳、30歳を過ぎてもそこから才能に目覚めることもある。
自分でそれを伸ばすことのできる環境を整えることができれば、おそらく、きっと。
非常に夢のある話だとは思いませんか?
生まれ持った才能
身長と体格:大谷翔平
才能については様々な研究結果と意見があります。
- 結局才能で決まるよ
- 環境の方が重要だよ
- どちらも重要だよ
- 才能の重要性はともかく、あなたがそれで努力するかどうかは別の話だよ
才能と環境に関するいろいろな本を読んでみたのですが、どうやら5年10年で才能と環境どちらが重要かという結論は入れ替わったりしていてまだはっきりしていないようです。
そんな数多くの才能と呼ばれるものの中でも一つだけ覆すことができないものが、身体能力の中でもとりわけ身長と体格です。
大谷翔平選手は野球の分野でプロではオンリーワンの投手と野手(指名打者)両方でプレーする特別な存在。
今まで全てのプレーヤーがプロに入るとそのレベルの違いから投手と打撃の二刀流を諦めてきましたが、大谷翔平選手はその両方でしっかりと成果を出しています。
身長は日本人としては極めて大きい193cm。
スラッとした長い手足は体格の大きな野球選手の中でも一際目立ちます。
特に日本でプレーしていた当時は周りが小人に見えてしまうほどの存在感がありました。
日本のプロ野球選手のボールの速さ、球速もずいぶんと上がりましたが大谷選手はその中でも圧倒的な最高速度165km/h!
それほどすごい球を投げるのに、彼の投球は特別に力を入れているようには見えません。怪物ぞろいのプロの中で、さらに一人だけ積んでいるエンジンが違うようです。
スポーツにおいては特に陸上競技短距離の決勝が黒人選手がほとんどを占めていたり、アメリカプロバスケットボールの選手の平均身長が198cmだったりと体格や筋肉といった生まれつきのものが大きな要素となっています。
もし、否定できない才能があるとしたらこの身体的要因だと何人かの研究者は述べています。
とはいえ、何も身長が大きいことが必ずしも全てにおいて有利というわけではありません。
例えば競馬の騎手の世界では平均身長は160cmほどで小柄な方が有利。
水泳では胴が長くて足が短く腕が長いほうが有利など、競技によって有利となる体型には差があるようです。
考えてみれば大谷選手の野球の例で見ても、身長が一番大きい選手が最も記録を残したというわけではありませんからね。
ベースとなる身長や筋肉の付き方は影響力が大きいかも知れませんが、競技特有の技術や競技中の判断力であるスポーツ・インテリジェンス、仲間との連携・チームワークなど数多くの要素が結果につながるのです。
変えられないと思われがちな身長自体も、生まれつきの才能である遺伝以外の、睡眠・食事・運動などの要素次第でプラスマイナス8~9cmの差がでるそうです。
例えば平均的には175cmの身長になる才能(遺伝子)を持った男の子がいたとして、理想的な環境を整えてあげれば184cmまで伸びるし、悪ければ166cmまでしか伸びないということですね。
これに関してはちょっと驚く統計としてはオランダ人の平均身長は非常に高いです。
人種があまり変わらないはずの周りの国の人に比べてもなお背が高いのかははっきりしないのですが、どうやらチーズのような乳製品の摂取量が非常に多いことや睡眠時間が長いことなど文化的要因が影響しているかもしれないのです。
身体的なものは生まれつきの才能ですべて決まると思われがちですが、どうやら思った以上に環境も影響している可能性があるというのは知っておくべきことでしょう。
才能と努力:ビートルズ
大事なのは才能か、それとも努力か――。
努力の重要性もよく問われる質問ですね。
それに対する答えとして最近では「1万時間の法則」とそれに対する批判として「ディーププラクティス」という概念が提唱されています。
1万時間の法則というのはある分野で世界に通用する能力を身につけるには1万時間の訓練が必要だという理論です。
これには有名な音楽大学に通う生徒のバイオリンの練習時間を調査した研究があります。
練習時間が20歳前後までにおよそ1万時間に到達するような生徒はプロとしてやっていける見込みがあるけれど、それよりも少ない生徒ではプロとしての見込みは無いという結果が出たそうなのです。
具体的な有名人の例を見てみると、世界一有名なバンドと言えるビートルズは世界的なヒットの前に数年間、お金を稼ぐためにほとんど毎日何時間もバーでライブを行っていました。
その間に曲を演奏していた時間を合計すると1万時間になるというのです。
こういった調査や例から、ある分野で一流になるには1万時間の練習が必要だという1万時間の法則が提唱され、様々なメディアで取り上げられるようになったのです。
一方で理論の広がりとともに、音楽でも学問でもスポーツでも全部トップレベルになるには1万時間の練習が必要? さすがに差はあるだろう、という批判もされるようになりました。
1万時間の法則が訓練の「量」の重要性を語るのであれば、訓練の「質」について語るのは「ディーププラクティス」です。
世界的なプレイヤーを何人も排出しているテニススクールや有名なピアノの指導者はどんな指導を与えているのか調べたところ、その訓練には共通点がありました。
簡単に言ってしまうと、
- 練習は次に獲得したいスキルごとに細かく分ける
- 何度も目標となるレベルを満たしているか細かく確認し修正する
ことが重要だということです。
言われてみれば当たり前のことなのですが、よく考えてみると学校の授業などは1コマが45分~50分、大学なら90分で非常に時間が長いですよね。
しかも先生が講義するのが中心で、合間に練習問題がたまに入るくらいです。
ディーププラクティスならこの練習問題を解くことがほぼ全部になります。
1回の練習と振り返りにかかる時間は長くても5分~10分程度と非常に短く、とにかく細かく振り返りを重ねるのです。
練習の中心部分であるがゆえに、積み重ねたときの進歩はものすごく大きなものになります。
才能は変えられないかもしれない。
でも、もしかしたら圧倒的な練習の量と効率を兼ね備えることが出来たら逆転できるかもしれないのです。
ここまで見ると天才の要素である、成長の速さはこのディーププラクティスを無意識で行うことと同じなのかも知れないと思うのです。
まとめ
天才とは?
- 隠れた天才:能力によって判断
- 業績による天才:成し遂げた成果、アウトプットによって判断
天才を作る4つの要因
- アウトプット力
- インプット力
- 環境
- 生まれつきの才能とそれを伸ばす訓練
天才は業績=アウトプットによって評価されるもの。
これがこの記事の答えです。
ですがその成果を出すにはアウトプットを出すための力、インプットする力、力を育てる環境、元々持っていた才能とそれを伸ばす訓練が必要です。
それらを細かく分解して見ていくことで、天才に必要な要素が分かったかと思います。
中には後で鍛えられる部分も十分にあるので、自分に足りない部分を補ったり得意な部分を伸ばせばもっと成果を上げたり、もしかしたら天才になれるかもしれません。
そのためにも天才たちにならってできることから行動していきましょう。
能力を磨くためのマインドセットに関して書いた記事です。
天才をつくるのは1万時間の法則と広めた本。
練習量の重要性を教えてくれます。
こちらは天才を作るのに必要な練習の質はどこから来るのかを書いた本です。
最近読んだ中では抜群に良かったです。