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【書評】最強の筋トレは『プリズナートレーニング』【感想】

まとめ

読むと思わず早く筋トレしたくなるワクワク感を与えてくれる。

 

ジム通いや特別なマシンなど不要な自重トレーニングの

初心者から上級者までの道のりを教えてくれる

自宅ライザップとも言えるわかりやすいプログラムをまとめた本。

 

 

プリズナートレーニングを簡単に表すと、

 

筋トレの本来の目的とは身体を自由に動かせるようになることだ。

ジムでのマシンを使ったトレーニングの歴史はせいぜい100年にみたない。


これらは特定の動きにしか対応していない不自然なもので、
日常ではまずありえないほどの負荷を与えることから関節などを痛めやすい。

その上、身体を鍛えることでいろんな動作をできるようになるという本来の目的からも離れてしまっている。

 

一方で歴史的にはジムができる前から一部の人間は見事な肉体を築いてきた。
現代でもジムに通うどころか道具に頼れず自分の肉体だけが頼りの刑務所の中でも見事な肉体を保っている人間がいる。

 

彼らは毎日長時間のトレーニングをするほどの自由もなく、
プロテインを始めとした高タンパクな食事を徹底できるわけでもない。

 

しかしそれゆえに彼らが筋肉を身につけたトレーニングは本質を突いているはずだ。

 

ジムでのマシントレーニングに対して、自分の身体と床や壁、ちょっとした掴まれる場所など周囲の環境だけを使った自重トレーニングがそれだ。

 

それらを再度まとめ直したのがプリズナートレーニングである。

 

 


本書は325ページとボリュームがあり、3つのパートに分かれている。


1部は最初の60ページほど。


プリズナートレーニングとは何か、それが生まれた理由、
ジムでのマシントレーニングとの比較や利点を語り、
トレーニングへの期待を煽りモチベーションを高めてくれる。

 

2部は中心となるトレーニング方法の解説部分。

 

鍛える部位ごとに6種類のトレーニングを細かく10段階に分け、
トレーニングの解説は文章だけではなく2枚ずつのモノクロ写真によって丁寧に解説されている。

 

このパートは6種類×10レベルで60ものトレーニングを解説している。
200ページ以上にも渡り、非常にボリュームがある。

 


3部は実際にトレーニングを行っていく上での注意事項や疑問点への解説。
プログラムの組み方についてのアドバイスがまとめられている。

 

この部分は他のトレーニングの本に比べるとかなり充実しており、
実際にプリズナートレーニングを行っていく準備を整えてくれる。

 

 


お金をかけずにトレーニングをしたい、自重トレーニングをやってみたいという人には
この本があればひとまず他になにもいらない初心者から上級者まで満足させる欲張りセットの1冊と言えるだろう。

 

 

 

  

良かった点

 

丁寧なレベル分け、実際に取り組むことを想定したプログラム

 

プリズナートレーニングが他の自重トレーニングに比べて優れているのは、
鍛える部位によってトレーニングを6種類にわけるだけでなく、
レベルを細かく10に分けてさらにそれを3段階に目標回数・セット数まで設定している点だ。

 

トレーニングが初めての初心者から、いずれ到達する上級者までの道のりを
非常に体系的に提供してくれる。

 

トレーニングのレベルが上がるごとに動作の難易度は上がっていく。
単純に筋力をつけるだけでなく、身体を自在に動かせるようになるという目的が自然と満たされていくようになっている。

 

多様なトレーニングをカタログのように紹介した本は数多くあるが、
順番に難易度を上げてくれる本は少なく、
さらにここまで細かいレベル分けをした本は見たことがない。

 

どのトレーニングから始めればいいのかというありがちな疑問にも、

6種目のうち基本の4種目のステップ1から取り組むという明確な指針が与えられているのがこの本の優れた点だろう。

 

そう、言ってしまえば本代のわずか2000円ほどですぐに取り組めるトレーニングプログラムが最初から最後まで完璧に提供されているのだ。

 

トレーニングの取り組み方へのアドバイスも多く、
単に本を買って終わりではなく、使うことを意識した作りになっている。

 

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自重トレ最大の利点→ほぼ無料

 

ジムでのマシントレーニングと自重トレーニングにおいて最大の違いの一つが、

かかる費用の差だ。

 

例えばジムの中でも最大手の一つであるコナミスポーツクラブは
使い放題だと施設にもよるが最低でも月額1万340円かかる。

 

マシン以外にもプールなどが使えたりトレーナーがいたり単純な比較はできないが、
自重トレは基本的にゼロ円で始めることができる。


プリズナートレーニングは自重トレとしては比較的道具を使うほうだ。
懸垂ができる高さの鉄棒、柱、机、長椅子などを種目によっては使う。

 

特に懸垂が6つのトレーニング種目の1つになっており、
トレーニングをしばらく続けたら鉄棒のようなぶら下がり器具が使える環境は必要だ。

 

近くに公園があればおそらく問題ないが、雨の日などはトレーニングに影響を与えるかもしれない。

 

もし道具を家で準備するなら、懸垂器具は突っ張り棒のようなタイプの安いものであれば3000円程度から、一般的には7000~1万円前後のものが多い。

 

それでもジムに通うことに比べたらほとんど無料と言っても良いだろう。

 

あるいは費用の面でも効率の面で見ても、シンプルな自重トレーニングとマシントレーニングの間にあるのがプリズナートレーニングと言えるかもしれない。

 

ドアの枠などを利用して懸垂できるようにする器具。

近くの公園に鉄棒がない、家で気軽にトレーニングをしたい場合におすすめ。

 

バーが取り付けにくい部屋に住んでいる場合の懸垂器具。

場所を多少取るが家でしっかりトレーニングができる。

 

大きいタイプの懸垂器具を使う場合は床を傷つけないようマットがあると良し。


モチベーションを十二分に高めてくれる

 

多少芝居がかったようなところはあるが、本書の文章は非常に面白い

 

ジムでのマシントレーニングを否定し自重トレーニングを勧める論理展開は、多少強引なところはあるが一理あるかもしれないと思えるくらいの説得力はある。

 

そして何よりも、読んでいると思わず身体を鍛えたいワクワクした気持ちが浮かび上がってくる。

 

そう、トレーニングを始めるのに一番大切な、
やりたいというモチベーションをこの本は与えてくれるのだ。

 

実際に私も2ヶ月ほどトレーニングを続けているが、道具があまり必要ない気軽さもあってほとんどサボらずに続けられている。

 

 

困ったときのためのアドバイスが非常に優れている

 

基本的なトレーニングの方法と回数はどんな本にでも書いてある。
しかし、人によってトレーニングを開始したときの筋力にはかなりの差がある。

 

身体を普段からよく動かす仕事についている人、デスクワークの人、
学生時代に部活でハードなトレーニングを積んでいた人、
運動は体育のとき以来だと言う人、様々である。

 

そう、初心者にはできない動作も多く、何から始めていいのかわからないことが多いのだ。

 

プリズナートレーニングの一番の特徴は
1,2年ではなくもっと時間をかけてトレーニングのレベルを上げていくことを
筆者が想定している点にあると言っても良いかもしれない。

 

余裕があっても各種目のレベル1から順番に時間をかけてトレーニングすることを筆者は推奨している。

 

これには理由があり、怪我防止のために筋肉だけでなく関節を強化したり、より高いレベルのトレーニングのウォーミングアップとして低いレベルのトレーニングを行うことを想定してるからだ。

 

週何回・何種目トレーニングするのかという予定の立て方も5つも例が載せられているし、回数の増やし方やトレーニングの記録のつけ方などちょっとしたアドバイスもきめ細やかにされている。

 

この本は読む本である以上に、実際に使う本なのである。

 

 

悪かった点

 

恥ずかしすぎる表紙デザイン

 

この本の最大の難点は本屋でレジに持っていくのが思わず恥ずかしさを感じるカバーデザインにある。

 

人気格闘マンガ『刃牙』シリーズのキャラクターが大きく描かれた表紙は
本を見つけるのには役に立つが、外で広げるのは無理だと思うほどだ。

 

本のコンセプトにはぴったりで、刑務所の中で主人公が出会うものすごい筋肉とパワーを持つキャラクターなのは分かるが購入したらすぐにカバーを取り外すことをおすすめする。

 

(Kindleのような電子書籍版を買うなら表紙は意識しなくて良いかもしれないが、

実際にトレーニングする際にサッと本を開いてフォームや注意点を参考にすることが多い。紙の本を通販で買うのが一番良いかと思う) 

 

一部トレーニングが難しすぎる問題

 

実際に私もこの本のトレーニングを2ヶ月ほど続けているのだが、
種目によって難易度の設定がバラバラなところがある。

 

ステップ1だとショルダースタンド・スクワットが鬼門だと感じている。

飛ばして次から始めてもよいだろう。
ニー・タックはつらいが少ない回数なら95%以上の人ができるだろうし、
逆にヴァーチカル・プルは誰がやっても非常に楽に感じるだろう。


先にも触れたようにトレーニング開始時点の筋力には個人差があり、多少の難易度の差は仕方がない。


しかしSNSやブログを見てみると、いくつかの種目では急に難易度が上がるのは周知の事実のようだ。


10段階に難易度を分けたのは非常にわかりやすいのだが、
10という数字にこだわるのではなくもっと細かく分けても良いので難易度の上がり幅を統一してほしかった。

 

(アドバイスで難しいと感じたときのフォローは一応されているのが救いである) 

 

マシントレーニング・ジム批判は正当か?

 

この本の根底部分に自重トレーニングVSマシントレーニングという構図がある。


自重トレーニングの方が優れている理由に、マシントレーニングは
怪我をしやすい、普段使わないような動作を鍛えても意味がないという理屈がある。

 

これに関してはyoutubeでジムトレーナーが反論していて、
マシンを使ったほうがトレーニングの効率がはるかに良いのでわざわざ自重トレーニングをする意味はないと答えている。

 

怪我についても正しいフォームで正しい負荷、正しい回数を行えば怪我しやすいなんてことはない。むしろ腱を鍛えるには高負荷のトレーニングの方が優れているという研究結果があると答えている。


効率については確かにその通りの部分がある。


マシンの方がより高い負荷を効率的にかけることが可能だ。

 

しかし高い負荷をかけることは怪我のリスクと表裏一体である。

プリズナートレーニング時間をかけて負荷を上げていき、筋肉だけでなく腱なども鍛え怪我の対策をするとともに高レベルでは通常の自重トレーニングよりも高い負荷を意識したトレーニングだ。

 


そして怪我についてはそもそも論だが、プリズナートレーニングの著者にせよ動画のトレーナーにせよ統計を取った信頼できるデータに基づいた議論を両者ともにしていないのでなんとも言えない。

腱を鍛える高負荷のトレーニングの研究もどれくらいが高負荷でそれはマシンを使わないと不可能なのか、そもそも信頼できる研究なのかが不明だ。

 

トレーニングに限らず、健康に関する研究は(特に食品においては)スポンサーが関連する企業であるなど利益に反する研究が歪められたりそもそもなされなかったりする場合が少なくない。

 

自分の仕事が減ってしまうのだから、ジムのトレーナーがマシントレーニングより自重トレーニングが優れているなんて言うわけがないのである。

 

それは置いておくとしても、ジムに通う、パーソナルトレーナーがつけば正しいフォームや負荷でトレーニングができるというのも実は確実ではない

 

実はトレーナーの半数以上は非正規雇用である。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/04/pdf/038-041.pdf

(週刊誌やニュースでは8割以上とも9割以上とも言われることもある)


ズブの素人がとりあえずマシンの使い方を教えるだけだったり、
週刊誌で利用者に怪我人が出ていることが取り上げられていたりもする。

 

トレーナーの資格は民間資格しかなく、国家資格に比べて信頼性は高くない。

それどころか複数店舗を展開しているジムの責任者が特に資格や経歴について語らないことも多々ある。

 

(もともとプロ野球のコーチなどでさえ、しっかりとしたスポーツ医学を学んだ人は多くない。本当に優れたトレーナーというのはかなり少ないのだ)

 


長くなったが、プリズナートレーニングもマシントレーニングも互いを批判するにはもっと正確な比較データに基づいた議論が必要。


その上でもっと生理学的なデータが集まればデメリットを克服したメリットだけの優れたマシンや使い方は出てくる可能性はある。


しかし現状ではトレーナーの質が保証されていない点は確かにあり、
怪我を避けるには効率を追い求めすぎずゆっくりとトレーニングのレベルを上げていくのが一番。

 

本書の中でのマシントレーニング批判自体はやはり行き過ぎで、通常の鍛え方ならほとんどの人には問題がなく、20%も30%も怪我をする人がいるわけではないだろう。

 

(とはいえ、見過ごせるほど少ないわけではなく100人いれば数人はケガをするくらいの割合ではありそうだ)


互いにメリット・デメリットがあるのだからうまく棲み分けをして、
協力してより情報を蓄積してもっとよいトレーニング環境を築いていってほしい。

 

 

結論

 

プリズナートレーニングは、

怪我を避けるために長期間で取り組むことが前提の自重トレーニングの一種。

 

プログラムを適切に進めていけば高負荷になっていき、確実な筋力と身体に自由を与えてくれる(一部難易度の高いトレーニングには注意)。

 

道具は身の回りのものでほぼ揃ったり代用できるので無料でもできるが、

懸垂のできる環境だけは準備したい。

 

数ヶ月とか1年といった短期間で筋肉をとにかく効率よくつけたいなら

お金をかけてジムを使ったほうが良い。

 

しかし手軽にダイエットや健康目的でトレーニングを始めたいなら、

ほぼこの1冊ですべてがそろう最強の筋トレプリズナートレーニングである。

 

 

基本的に本1冊でトレーニング準備はOK.

電子書籍より紙の本がおすすめ。

 

ドアの枠などを利用して懸垂できるようにする器具。

近くの公園に鉄棒がない、家で気軽にトレーニングをしたい場合におすすめ。

 

バーが取り付けにくい部屋に住んでいる場合の懸垂器具。

場所を多少取るが家でしっかりトレーニングができる。

 

大きいタイプの懸垂器具を使う場合は床を傷つけないようマットがあると良し。

 

必須ではないがヨガマットがあると汗による床の汚れなどを気にせずトレーニングできる。 

それほど高くないもので十分役に立つ。