- 導入期に普通じゃない量の努力をする 丸尾栄一郎(ベイビーステップ)
- 基礎訓練を嫌がらない 高柳廻(オールラウンダー廻)
- 取捨選択をする 霧隠主将(おれはキャプテン)
- 優れた指導者を見つける 七嶋裕之(砂の栄冠)
- 練習より実戦経験を積む 亜城木夢叶(バクマン。)
- 考えながら挑戦する 蛭魔妖一(アイシールド21)
- リスクを取る 桜木建二(ドラゴン桜)
- 環境を作る 源奈臣(Capeta)
- 人を巻き込む 一条龍(BE BLUES!〜青になれ〜)
- 当たり前のように続ける 宮本大(BLUE GIANT)
ん? どうかした?
岸本先生が連載取るまでのやつのこと?
まあ作品はエンターテイメントだし、作者と同じ物ではないから……。
一応リーは最後まで忍術も幻術も使えなかったんじゃないかな? まあ特化系の天才と言えなくはないけど、能力を数値化したら合計値は一番下とかなはず。そのあたりは設定を崩さないように考えてあって、見せ方とか演出でバランス取ってると思う。
あ、それまとめたら結構面白そうだね。
わかった、ちょっと本棚とKindleを見返してみる。
導入期に普通じゃない量の努力をする 丸尾栄一郎(ベイビーステップ
)
ふう、結構大変だった……。
意外と完全な凡人って少ないんだよね。それもあって今回は「どんな努力をしたか」っていう点に注目することにしたよ。終盤だと天才扱いでも物語初期だと凡人扱いって結構多いしね。普通の人から見たら天才って思われるキャラも入ったけどそれは勘弁してほしい。
切りの良いところで10人かな。
一人目は週刊少年マガジンで連載中のテニス漫画「ベイビーステップ」の主人公、丸尾栄一郎くんです。
いや、あれはテニヌ。「ベイビーステップ」は必殺技とか叫ばない。取材とかめちゃくちゃしっかりしたリアル系の作品。
んー、運動部に所属してなくて高1からテニス初めて高校卒業までにプロになるから作中では一部天才扱いされてるけど、読んでるとそんな感じはしないかな。肉体的にも身長が175cmで恵まれてるわけじゃないし。
一応、動体視力は作中トップクラスなのかな? ボレー勝負になったらめっちゃ強いって描写がある。
まあそれよりも試合中に考える思考の量が桁外れっていうことの方が特筆すべき点だと思う。
前に記事書いて今も続けてるゼロ秒思考みたいな感じかな。特に優れたところがないし、相手は経験が自分より長くて格上ばかりだから何度も追い詰められるんだけどその度にどうやったら状況を変えられるか考えていろいろ試すのがすごいんだ。
僕もサッカーやってたんだけど、試合で動けるようになったのって10とか20練習試合をやってからだったな。 しかもそれだけやっても周りが多少見えるようになるって程度で、エーちゃん(丸尾のあだ名)みたいに相手の癖とか考えられるレベルまではいかなかったと思う。
そうだね。エーちゃんはテニスを始めたばっかりのとき、壁に向かってボールを打ち続ける壁打ちをするんだけどそれで何時間も自分が納得するまで続けたところかな。
いや、最初にめちゃめちゃハマるってすごいんだよ。試合とか分かりやすい面白さじゃないところで夢中になれるってことはそういう面白い部分に入ったらもっとのめり込むわけだし。
うん。これは人が教えられる部分じゃなくて本当に相性が良いものにしかなかなかできないと思う。 ここで大事なのはそこまでハマらなくても、嫌じゃないって感じるレベルならかなり向いてるんじゃないかってことだよね。
そうそう。そうやって広げていってほしい。
うん。
それはもちろんわかってたんだ。実はエーちゃんはどこで持ってくるかすごい悩んだんだよ。「ベイビーステップ」はぶっちゃけ今のスポーツとかそれ以外の仕事とか勉強とか趣味も含めて一番学べる漫画って言っても過言じゃないくらいの情報量がある。
それで今回選んだキャラはエーちゃんに限らないけど、そのキャラ特有の努力っていうよりは実はあのキャラも違う形で同じ努力をしてるっていうのがすごく多いことに気づいたんだ。
むしろ被っている方が色んなところで通用する汎用性のあるやり方なんじゃないかって思って、それで網羅的な作品である「ベイビーステップ」のエーちゃんは最初に持ってくることにしたんだよ。
- やり始め・初心者のときに他の人より熱中できると、面白い部分に入ったときにもっとのめり込んで上達が早い
- つまらない部分が嫌じゃないと感じたら実はかなり向いている
- 効率の良い努力の要素は完全に固有のものではなく、汎用性のあるものである
「ベイビーステップ」は根性論じゃない科学的なメンタルの鍛え方とかも結構描いてるからね。そのあたりも読み応えがあって魅力です!
基礎訓練を嫌がらない 高柳廻(オールラウンダー廻
)
二人目は「オールラウンダー廻」の主人公、高柳廻くん。
修斗っていうK-1とかプライドで流行った総合格闘技の話だね。 何となく生きてた高校生の主人公が思うところあって修斗を始めるんだけど、最初はそれほど熱心には取り組んでない。 そんなときにプロを目指す幼馴染と大会で再会して負けちゃう。 ここではじめてその幼馴染と再戦するために強くなろうとして本気になるっていうのが大まかなストーリー。
まあ作者の遠藤浩輝先生の作風的に、ちょこちょこちょっとだけ重い話が出てくるから青年誌だったんだろうね。 自転車で日本一周とかインドに旅に行くとかじゃない、地に足をつけた日常の中で自分探しをかなり上手く描いた作品なんだ。大学入ったばっかりの子とかちょっと大人びた高校生に読んでほしい作品だなあ。
これはズバリ、つまらない基礎訓練をちゃんとするということです。
いや実際にはおろそかにしがちなんだよ。
それもあるね。リフティングとかドリブルとかつまらない練習をちゃんと続けていくとちゃんと上手くなるのがわかるんだよ。
簡単なところに意識を割かないでいいぶん、難しいところに集中できるって説明だとどう?
シュートするときもただ強いボールを蹴るのに集中するんじゃなくて、キーパーの位置とか、どうフェイントをかけるとか、ディフェンスが戻ってこないかとか慣れるといろいろ見えてくるんだ。基礎がおろそかだとそこまで考えられない。だから基礎は思った以上に大事なんだ。
廻くんはキャラクターの特徴としてパンチとかキックとか寝技が強いみたいなのはないんだ。ライバルはキックが一撃必殺的に強くて対照的だね。 強みがないけど廻くんは技の組み合わせで相手を上回ったり、組み付いてから寝技に移るまでの間みたいな、スキができる部分を突くのが上手いって描写されてるんだ。 これは本人の資質もあるけどジムの指導者の教えも良くて基礎がしっかりしたからっていう側面が結構な部分あると思うな。
あと、もっと強くなるために食事の大切さの描写が出てきたり、基礎があってこそ練習以外の部分も意識すれば成長できるみたいなところが描かれてるのは地味に良いと思う。
- 基礎が大事なのは簡単な部分に力を割かず難しい部分に集中するため
- 誰にでも分かる努力以外の日常の部分でも意識していると強くなるヒントがある
19巻で完結しててそこまで長くないし、特に若い人に1度は読んでほしい秀作です!
取捨選択をする 霧隠主将(おれはキャプテン)
3人目は「おれはキャプテン」の霧隠主将。
いや、主将って書いてカズマサって読むの。
そう。元々弱小の中学野球部でプレイヤーとしてはあんまりやる気のない補欠のキャッチャーだった霧隠が、顧問の教育に配慮した一存でキャプテンにされちゃうの。それでだんだんと目覚めてチームを改革して日本一を目指す話。
あれは今読むと半分ファンタジーだからなあ……。
うん、最初の方で弱小野球部が強くなるために徹底的に打撃を鍛えて守備は全然練習しないことかな。
試合だといきなり同じくらいの実力(弱小校)だけど負け越してるライバル校に当たる。そこで打撃は効果が出るんだけど守備はやっぱりボロボロなんだよね(笑)。
まあそれでもなんとか勝ち上がっていくんだけどね。ポイントは使える時間には限りがあるから取捨選択をするってところかな。
そうそう。モデルにしてるとは思うんだけど、まさにあれ。20時間で絵の訓練をしたときもポイントを抑えるって話があったけどやっぱり大事なんだよ。まあ勝負ごとだから実際には強みが上手く噛み合わない相手とかいたりするんだけどね。
- 時間には限りがある。やることとやらないことをはっきり選択するほうが成果が出やすい
中学・高校編は完結済みです。現在は東大野球部で勝利を目指す続編「ロクダイ」が連載中でこちらも珍しい切り口で野球好きにはオススメです!
優れた指導者を見つける 七嶋裕之(砂の栄冠)
4人目は「砂の栄冠」のナナこと七嶋裕之くん。
高校野球だね。
でも導入が面白くて、チームを応援してくれるおじいさんから1000万円もらうんだ。それでそのお金を使って甲子園を目指すっていう一見邪道っぽいお話。
いや、チームの監督はプライドばっかり高くて駄目な大人として描かれてるんだ。 それで、その支援者であるおじいさんにも監督に渡したらどうですかって聞くんだけど、「あの人こそ駄目です」って言われちゃう(笑)。
そう、そこが面白いの。ろくな指導者がいないから「伝説のノックマン」っていうすごい人を探して1ヶ月100万円でコーチをしてもらう。
モデルはイチローかな? ノックが良いからチームの守備力が上がるし、ノックマンの影響もあって最後はナナは二刀流になる。
いや、右と左、両方で投げられるようになるの(笑)。
まあ実際それで出た試合は点を取られちゃうんだけど、結構バランスが取られているんだよね。
公立の学校だから戦力になるピッチャーが基本一人しかいないとか。怪我したらどうするのとか、ドラマを作るためにピンチをどう作るかとか、そういうのを計算して描いてるのが分かるんだ。
まあそれはともかく。実際指導者っていうのは大切だよ。
そう、でも実際にはそんなことほとんどない。 そういう理由もあって大人になってから何かを覚えようって思ったときとか、子供にスポーツとかをやらせようって思う前にぜひ読んでほしい作品なんだ。
相性もあると思うけどね。僕の場合は大学時代に家庭教師をやっていたけど、一人目と何人か教えた後だとぜんぜんレベルが違ったと思う。
テストの解答を見て、ここはわからないから前の問題のここを見てちょっと変えたんでしょとか指摘したときは「なんでわかるの? 魔法ですか?」って聞かれたこともあったよ。
これも「ベイビーステップ」で話した基礎がしっかりしたから難しい部分に集中できるっていうのに近いかな。学ぶ側じゃなくて教える側としての基礎ができたってことね。
素人の僕でもそうだったから松岡修造さんとかは実際かなりすごいはずなんだよね。 もちろんプレイヤーとしてすごかった人が必ずしも指導者として優れているわけではないんだけど、素養として重要な部分の一つではあるんだよ。
- 優れた指導者はこちらが気づかないような部分を見抜いてアドバイスする力を持っている。普通の指導者との差は思った以上に大きい
「ドラゴン桜」の三田紀房先生が作者なのでクセのある絵ですが、野球漫画としてはかなり本格的で面白いです。子供に習い事をさせる親御さん、スポーツ推薦で進学する人などにはぜひ読んでもらいたい作品!
練習より実戦経験を積む 亜城木夢叶(バクマン。)
5人目は「バクマン。」の亜城木夢叶先生です。
ツッコミありがとう(笑)。でもちゃんと意味があるんだよ。
実は物語後半の方は二人は別々で行動してる感じがあるんだよね。シュージンが白鳥くんの師匠っぽくなる話とか、サイコーが同じ頃に作画速度上げようと頑張る話とか。
そういうこともあって、あえてペンネームっぽく一緒に活動する最初の方に注目しました。
うん、サイコーとシュージンはプロになるって決めて3ヶ月も立たないうちに最初の作品を完成させて持ち込みをしてるってことかな。
いや、それも大事なんだけど実戦経験を積むことの重要性。
うん。基礎は大事なんだけど準備ってしようと思えばきりがないから、最低限の準備が整ったらどんどん挑戦していくべきなんだよね。
そう。もちろん研修なしで何も準備が整ってない状態で放り出すのとかとは違うんだけど、実際にやってみて何が必要かとかも分かることが多いし。
そうそう。あのときは模写をしたけど。模写って形に残るし、人に評価もしてもらいやすいから。完成させるっていうのもすごく重要なポイントだしね。
うん。練習の練習だとモチベーションも続かないし、いきなり大きな目標に挑戦するんじゃなくてもプログラミングなら簡単なサービスを作ってみるとかがやっぱり一番勉強になるのは広く知られているし。
- 最低限の準備ができたら挑戦しよう
- 練習の練習をするより小さくても形に残るものに取り組もう
漫画で読むのもいいですし、完結までをアニメ化しているのも嬉しいところです。「バクマン。」は何かを創作したいと思う人はぜひ読んでおきたい作品の一つ!
考えながら挑戦する 蛭魔妖一(アイシールド21)
6人目は「アイシールド21」の蛭魔妖一です。
「スラムダンク」がすごい名作扱いされてる一方で、「アイシールド21」は正直過小評価されてると思っています。実はかなり緻密に作られためちゃくちゃすごい作品です。
バスケは当時漫画は少なくても授業でやることが多いし部活はそれなりにあっただろうしね。アメフトはそもそも部活自体が高校じゃほとんどないし。
まあ、作品自体の批評は置いといて。実は「アイシールド21」は選ぶのにかなり悩んだんだよね。
そもそも「オールラウンダーより専門選手」って作中で話されてるように特化型のキャラが多い。 主人公のセナはパシリから選手としてだけじゃなくて男として成長するし、モン太は野球で挫折したところからキャッチで世界一を目指すっていう超アツいキャラだし。
うん、桜庭・高見の王城凡人コンビが挫折から這い上がるところとか、神龍寺の天才阿含と比べられ続けた弟の雲水とかね。正直、「ベイビーステップ」と「アイシールド21」に関してはそれだけで記事が成立するくらい情報量が多いんだよ。
もう一人の主人公っていうのもあるんだけど、やっぱり肉体的には凡庸ながら頭脳でカバーして作中唯一無二の立ち位置にいるってことかなあ。
そう。序盤で悪どいキャラ立ちさせて勝たなきゃ意味ないって帰ろうとするドライなところとか見せた後で、終盤だと全部勝つためにやってて、なんでプロになりたいのって聞かれたら「面白いから」って答えるっていうね……。
これは考えながら挑戦するってことだね。
歴史もなくてメンバーを集めるのにも制限がある中でチームの方向性を示して勝つために相手を調べて対策を立てる。これは少年漫画だと怠ることが多くて、青年漫画だと「ONE OUTS」とかで見られるように重視されることが多い。
でもリアルに役立つのは蛭魔と同じ対策する方なんだよね。
うん。まあ美意識とかもあるんだろうけど、ルールの中でなら基本的には何をやっても良いわけで。もし度が外れていたら審判が何か理由をつけてペナルティを与えられるようになってるはずなんだよ。
そうそう。蛭魔のスタンスはチームのカラーそのもので、おバカキャラのモン太が頭を使ったりそういうシーンで徹底されてるのも深い。
「0.1秒縮めんのに1年かかったぜ」だね。作中でも屈指の名シーン。あれは考えて動くという戦略というよりも「オールラウンダー廻」で話した基礎の部分かな。
うん。蛭魔に関しては試合の指揮以外にもどぶろく先生を連れ戻したり戦略家・戦術家としてすごく優秀で前にコードギアスで学ぶ戦略と戦術で書いた内容もかなり意識してるはず。
うん。ちょっと話し足りない部分も足してまとめると、
- その努力にどんな意味があるか考えると目的がはっきりして効率がアップする
- 競争相手がいる場合は勝つためには自分のことだけでなく、相手のことも考える必要がある
ってところかな。
「アイシールド21」はまず読むべき漫画の1つ! 最近ジャンプで連載され始めた稲垣理一郎先生の新作「Dr.STONE」も意欲作でめちゃめちゃオススメです!
リスクを取る 桜木建二(ドラゴン桜)
7人目は「ドラゴン桜」から主役格の一人、桜木建二です。
うん。「ドラゴン桜」は漫画というよりビジネス書の文法で描かれた特殊な作品だから、そういう反応は予想してた。
はい。どちらも三田紀房先生の作品です。「砂の栄冠」は漫画にビジネス要素を少しだけ足した感じ、「ドラゴン桜」はビジネス書を漫画でやった感じでスタンスがちょっと違います。
これはリスクを取るということですね。
それだけじゃなくて、元暴走族で中卒という肩書が邪魔で仕事にありつけない桜木が一発逆転をかけて学校法人の再生に挑むというストーリーが根底にあるんだよ。
実際には教師の解雇と再雇用とか授業をテスト形式にするとか、先頭を切っていろんな策を打ち出してるんだよね。客観的に読んでみると弁護士でも教師でもなく、経営者としてが一番仕事をしているという。
そこが大事なポイントなんです。
桜木は作中だと矢島が反抗したときにバスケで黙らせたり、しばしば煽るように叫んだりパフォーマンスが目立つけれどもしっかり勝算があった上で動いています。
まず最初にいちばん大事な指導者である教師。数学、英語、理科、国語と理系で東大に挑むにあたり必要な社会以外の優秀な先生を1学期の早いうちにそろえています(社会はセンター試験のみなので桜木が担当)。
債務超過に陥った学校の存続のために銀行との返済プランの折衝をしている描写がありますし、さらに有力な支援者を見つけてきたりもおそらく桜木の手腕が全部ではないにせよあると思われます。
最後に、新入生獲得のための合同保護者説明会でウケたのはパフォーマンスによる部分もあるでしょうが、基本的に学校という組織が利益を第一にしない部分をついて、保護者と生徒のニーズを満たす戦略を基本にしたということは大いに関係しているはず。ここも注目するべき点です。
作中で矢島に「感情に流されると損をする」といったことを諭していることからも、桜木本人がリターンだけにとらわれてリスクを無視するというのは考えられません。
- リターンを取るためにはリスクを引き受ける必要がある
- リスクを冷静に計算し、勝機を把握する
漫画というよりビジネス書としてもサラッと読めるのが「ドラゴン桜」です。三田紀房先生のビジネス系作品はどれもオススメですが、就活を題材に扱った「銀のアンカー」が身も蓋もないけどグッとくるセリフがあって特に心に刺さります。
環境を作る 源奈臣(Capeta)
8人目はモータースポーツを題材にした漫画「Capeta」からライバルキャラの源奈臣です。
広い意味ではバイクなども含みますが、「Capeta」は遊園地にあるようなゴーカートのもっと速い版であるレーシングカートから始まって、最終的にはF1へステップアップしていくのが話の大きな流れですね。実は一度アニメ化もしています。アニメは原作の途中までで最後はオリジナル展開でしたが結構いい出来でした。
外国だと人気なんですが、日本はトヨタとか大きな自動車会社があるのにイマイチマイナーなのが残念です……。
主人公のカペタこと平勝平太は作中屈指の才能を持っていますが金銭的に恵まれない環境にいます、ライバルの源は英才教育を受けたカペタに次ぐ天才の持ち主として立ちはだかる感じです。
いえ、ここでの努力のポイントはいかに環境を作るかということです。
F1まで行くには非常にお金がかかります。カートの次のステップで自動車メーカーのレーサーとなれる新人オーディションの選考会を受けるのですが、マシンを壊して主人公のカペタは何百万か修理代を請求されたりすることからも非常にシビアなのです。
源はF1ドライバーへの道が険しいことを知りつくしており、レースで優勝した翌日にスポンサーに結果報告を自ら行うなど自分の夢を叶えるためにありとあらゆる努力をするのです。
カペタも自分よりも速い唯一のレーサーだと思っている源のそんな姿に触発され、活動資金の制約やそこから生まれるマシンの差などを真剣に考えるようになり、やがてはそれがプロを目指すきっかけとなるのです。
- あるもので頑張るのは誰もがやっている当然のこと。上を目指すには環境を整えることもまた大切
曽田正人先生は他にも優れた作品を数多く世に出していますが、個人的には「Capeta」が最高傑作だと思っています。クルマ好きもそうでない方も、男の子がガチでぶつかり合う漫画なのでBL好きにもぜひオススメしたい作品です。
人を巻き込む 一条龍(BE BLUES!〜青になれ〜)
9人目は「BE BLUES!〜青になれ〜」の主人公、一条龍です。
サンデーで連載中のサッカー漫画です。小学校編からスタートし、中学を終えて現在はメインの高校編で冬の選手権全国大会をかけた決戦中!
正直なところ、現在までで最も優れた少年誌のサッカー漫画はこの「BE BLUES!〜青になれ〜」だと思っています。
ビッグコミックスピリッツで連載中の「アオアシ」とこの作品を合わせてようやくリアルなサッカー漫画が世に出たと感じています。
「ホイッスル」はイマイチ小粒で「キャプテン翼」は今から見るとファンタジーですね。「DAYS」はサッカー漫画というよりは青春漫画です。
人を巻き込むことです。
そうですね。あらすじを言うと、龍ちゃんさんは天才と言われた小学校編で全国大会行きを決めた日に日常生活に戻れるかどうかという大怪我を負ってしまうのです。
まあまあ。龍ちゃんさんに奇跡などは一切おこりません。2年間の地道な苦しいリハビリの末、なんとか自力で立ち直って地元中学のサッカー部に入るのです。
そしてゴールデンエイジと呼ばれる日常生活では使わない脚でのプレイには重要な、神経が一番発達する大事な時期にプレイできなかったことから、龍ちゃんさんはかつての天才的なボールタッチの感覚を失ってしまいます。
そんな龍ちゃんさんはそれでも日本代表になるという夢を諦めません。今の自分に残された判断の素早さなどで徐々にチームの中で中心選手になっていくのです。
それまで本気ではなかったチームメイトたちは龍ちゃんさんのそんな真剣な姿に感化され、チームも勝利という目標に向けてまとまり始めたその矢先。
父親の仕事の都合で中学を卒業したらインドネシアに行くことになってしまうのです。どこでもサッカーはできると言っても、世界ランキングを見るとインドネシアの環境は日本にはるかに劣り将来の夢からは離れることになってしまうのです。
日本代表になるという夢は龍ちゃんさんの中では絶対。ですがリハビリを支えくれた家族のことを思うと日本に残るなどとは気安く言えない。 それを聞きつけたチームメイトは、厳しいかもしれないけれど龍ちゃんさんを全国大会に連れて行ってスカウトの目にとまるようにしようと龍ちゃんさんの幼馴染である優人に相談するのです。
もう一つも負けられないという状況にありながら、前半をビハインドで折り返したハーフタイム。ついに仲間たちの龍ちゃんさんを全国に連れて行くために絶対勝つぞという言葉が龍ちゃんさんにも明らかにされます。 それを受けて後半開始の直前、龍ちゃんさんは全国行きを最初に言い出したチームメイトの宮崎に「オレ、日本代表になる。いつか必ず」と穏やかにしかし決然と宣言する――!
あとは僕のKindleに最新刊まで入っているので自分で確認をお願いします。
というわけでまとめると、
- 一人ではできないこともある。環境を作るのと同じように人を巻き込んでいくことも重要
ということです。
当たり前のように続ける 宮本大(BLUE GIANT)
最後はジャズ漫画「BLUE GIANT」の主人公、宮本大です。
はい。その作品ですね。
はい。別枠ですね。「坂道のアポロン」なんかもジャズですがアニメは音楽を頑張っていても話の筋は青春漫画ですし。
逆に「ピアノの森」なんかは音楽漫画ですね。「四月は君の嘘」は音楽要素を上手く使った半分くらい青春マンガという感じ。まあ極めて偏見に満ちた個人的な感覚ですが。
いざ説明しようとすると難しいですが、シンプルに一人の少年がサックスをゼロから初めて世界一のプレイヤーになるまでの話というのが一番分かりやすいかと思います。
今聞かれて思ったんですけど、音楽漫画って話の筋を説明するの難しくありませんか?
例えば「BECK」の話ってどんな流れですか?
はい、ありがとうございます。それで実際にあらすじを考えると分かるんですけど、ほとんどの場合初心者に何か出会いがあってプロを目指すとかその流れなんですよ。
「デトロイト・メタル・シティ」とか「とんかつDJアゲ太郎」くらいぶっ飛んでると話は別ですが、ギャグ漫画なので(「とんかつDJアゲ太郎」は結構しっかり音楽やってるけどね)。
だから正直なところ、読まないとわからないんですよ。
ただ、残酷さと山の素晴らしさの両面を描ききった「岳 みんなの山」の作者、石塚真一の新作なのでそちらを知っている人にはある程度作品の雰囲気というか方向性は分かるかと。
「岳」は終盤まで大きな話の筋がなくて話の終着点を決めるのに作者の苦悩みたいのを僕としては結構強く感じました。「BLUE GIANT」は主人公が初心者から始まるので成長を描けるし、世界一のジャズプレイヤーになるという目標もしっかりしているので非常に読みやすいです。
はい、三歩みたいな感じです。精神的にものすごくタフで、どんな失敗にもくじけない。ただ「BLUE GIANT」は音楽に感情を載せるっていう要素が入ってくるのでもう少し人間よりかな……。
はい、主人公の大は中学3年のときにジャズに出会い、高校の夏休みまで2年半ほとんど誰に習うわけでもなく河原でたった一人サックスを吹き続けるんです。
はい。最後に一番大切な「続けるということ」の重要性に触れないといけないと思いまして。
イメージとしてはそうです。ただ、会長が武道を一度極めて行き詰った後に感謝に至ったのに対し、大は完全な初心者の頃から誰に聞かせるわけでもなく雨の日も雪の日も練習をし続けるんです。
基本的に外です。雨の日は人のこないトンネルで吹いたりもしてたみたいですが。
はい。物語はジャズと出会って2年半後の夏から動き出します。大は初めてのライブで失敗した後に師匠に出会うのですが、この人が実はアメリカのジャズの登竜門でプレイしたことのあるすごい人だったという流れ。 しかし、その師匠にも俺はこんなところ(河原)で吹くことは1日でも無理だろうと言わせるくらいですから。
高校を卒業してから東京に出て、着いたその日から練習を始めます。10巻で日本編が終わって新シリーズで海外編が始まるのですが、やはりこちらも着いた当日から練習を始めます。
楽器のメンテナンスの間とかは吹いてはいませんが、ジャズバーに演奏を聞きにいったり出来ることをしているみたいですね。
大の場合は毎日全力を出す、吹いているときは自分が世界一だと思って吹くとかもあって努力の密度も濃いんですけどね。ドラゴンボールの精神と時の部屋みたいなのを除くと意外と2年半とかでも努力をしてる主人公って少ないんですよ。
ああ、エイジは小学生の頃から描き続けてるからそうですね。サイコーも昔考えたキャラとかいっぱいノートにためてましたし。考えてみると表面的には違うタイプに見えるけどエイジは似てるタイプかもしれませんね。
バトル系だと修行が数日とか長くても1ヶ月くらいで終わるか「ワンピース」みたいに2年後とか飛ばすかのどちからがほとんどですけど、現実はそうはいきませんから。
はい。毎日少しずつでも努力を続けるとやったぶんは返ってきます。もちろん方法とか考えることも必要ですけど。それはやっぱり何よりも大事なことなんです。
- いろいろ努力について分析してきたけど、やっぱり続けることが一番大事!
「BLUE GIANT」は10巻で完結してサラッと読めます。新シリーズの「BLUE GIANT SUPREME」も始まったばかりでめちゃアツいのでオススメです!
たくさんの作品に触れたのでかなり長くなりました。ですが、優れた作品には作者が感じたことが取捨選択しながらもものすごい密度で込められています。 そう考えると自分の好きな作品やキャラをお手本にするというのは悪くない方法だと思うんです。
漫画とかアニメとか創作物だと自分のアンテナの感度が良ければめちゃくちゃのめり込めますからね。
今回あげたキャラは全員すごいと思うんですけど、凡人から出発して壁を一つ一つ越えていったという点を見るとやっぱり「ベイビーステップ」のエーちゃんでしょうか。